2020年04月24日 13:00 〜 14:00 オンライン開催
「新型コロナウイルス」 (12) 嶋津岳士・日本救急医学会代表理事/坂本哲也・日本臨床救急医学会代表理事

会見メモ

写真左:嶋津岳士氏、写真右:坂本哲也氏

 

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、救急車で搬送される発熱や呼吸器症状を訴える患者が、一般診療所で受け入れを断られる事例が急増している。その結果、救命救急センターの負担が増え、脳卒中、心筋梗塞などの重症患者への救急対応に支障が出ている。また救急医療従事者への感染症防護具も不足している。

嶋津岳士・日本救急医学会代表理事、坂本哲也・日本臨床救急医学会代表理事がオンラインで会見し、救急医療が直面している危機的な状況について話した。

司会 元村有希子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

 


会見リポート

「疑い患者」対応で困難増す

浅井 文和 (日本医学ジャーナリスト協会理事、朝日新聞出身)

 新型コロナウイルス感染症が広がる中、感染を疑われた患者の受け入れ先となる医療機関がなかなか見つからない事態が起きている。救急医療現場の実情を学会の代表理事を務める嶋津氏(右)と坂本氏が語った。

 坂本氏は「東京都内では救急搬送先を探す際に5回以上断られた件数が4月に入ってから従来の3~4倍になっている」と指摘。新型コロナウイルスのPCR検査で陽性と診断された患者よりも、発熱や呼吸苦などがあって感染の疑いを否定できない患者をどのように診察するかが困難になっているという。

 「疑い患者」は個室に入院するが、PCR検査の感度は70%程度かそれ以下と言われているので、検査結果が1回陰性でも新型コロナウイルス感染症をなかなか否定できず、個室から出てもらって一般病室で診るというわけにいかない。個室がいっぱいになると新たな患者を受けられない医療機関が出てくる。「検査で陽性の患者の受け入れ先は決まっているが、『疑い患者』の受け入れ先を探すことが困難になっているのが現状」という。

 このような状況の中で嶋津氏は「緊急性が高い心筋梗塞や出血を伴う多発外傷の患者の受け入れが遅くなる危険性がある」という。感染症ではないと思って受け入れた患者がその後、実は陽性だと判明すると院内感染などの重大な影響が出る。陽性・陰性・疑い例を早く判別するためにも迅速検査などを早く導入することが重要だという。

 さらに現場を苦しめているのが医療従事者への感染を防ぐマスク、ガウンなどの個人防護具の不足だ。特に高性能なN95マスクの不足が逼迫しているという。病院だけでなく、救急隊も個人防護具が不足しており、坂本氏は「国から産業界に国産できちんとした品質のものが安定供給できるように働きかけていただきたい。大至急現場に行き渡るようにお願いしたい」と訴えた。


ゲスト / Guest

  • 嶋津岳士

    日本

    日本救急医学会代表理事

  • 坂本哲也

    日本

    日本臨床救急医学会代表理事

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:12

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