2020年04月06日 14:30 〜 15:30 10階ホール
「アジア経済見通し2020年版」報告書会見 澤田康幸・アジア開発銀行(ADB)チーフエコノミスト

会見メモ

アジア開発銀行は4月3日に「アジア経済見通し2020年版」を発表した。

同報告書に基づき、澤田康幸・ADBチーフエコノミストが、マニラからリモートで会見。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響も踏まえたアジア・太平洋地域の経済状況および今後の展望について、解説した。

司会 藤井彰夫 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

「金融危機のリスクは小さい」

堀 義男 (時事通信社解説委員)

 中国から始まった新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、昨年末までの回復の兆しが打ち消され、世界経済のリード役であるアジア・太平洋地域の今年の成長率は2・2%に急減速する―。厳しい見通しに、マニラのアジア開発銀行(ADB)本部と初のネット中継で結ばれた記者会見場に緊張が走った。

 2021年の成長率は6・2%に「Ⅴ字回復」を見込むが、あくまで発射台の低い今年との比較。そもそも、「今年後半にはパンデミック(世界的大流行)が終息している」という前提が崩れない保証はない。会見でも「不確定要因」として感染がさらに拡大し、「3~6カ月」と仮定した終息までの期間が先送りとなるリスクを指摘。その場合、「成長押し下げの影響が想定よりも大きくなることもある」とし、成長見通しの一層の下方修正に含みを持たせた。

 ただ、想定通りに感染拡大が終息したとしても、今年2・3%成長にまで急激に落ち込むと予想した中国経済の低迷で、周辺国経済が大きな影響を受けるのは避けられない。会見での言及はなかったが、厳しい移動制限下で感染拡大が3~6カ月も続いてしまっては、消費そのものがなえてしまう恐れもあるのではないか。

  さらに、感染拡大のもたらすミクロ、マクロさまざまな負の連鎖の下、資金の移動にまで慎重な姿勢が強まれば、1990年代後半のアジア通貨危機や08年のリーマン危機時のような、金融面への深刻な影響を引き起こす懸念が高まる。

  この点については「今回の危機は公衆衛生上の問題で、経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に問題があっての危機ではない」と強調。その上で、アジア各国は過去の金融通貨危機の経験から、外貨準備を増やすなどさまざまな対策を採っているとの説明も加え、100%否定はしなかったものの、「金融危機のリスクは小さい」と言明した。

 


ゲスト / Guest

  • 澤田康幸 / Yasuyuki Sawada

    アジア開発銀行(ADB)チーフエコノミスト / chief economist, Asian Development Bank (ADB)

研究テーマ:アジア経済見通し2020年版

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