2020年03月25日 13:15 〜 14:15 10階ホール
「新型コロナウイルス」(4) 経済対策のあり方 小林慶一郎・慶應義塾大学客員教授

会見メモ

慶應大学で教鞭をとる小林氏(現在、東京財団政策研究所に研究主幹として赴任中)が、政府がとるべき経済対策について話した。

小林氏は3月18日に、佐藤主光・一橋大学大学院教授と共同で経済政策についての提言「新型コロナウイルス対策をどのように進めるか?」を発表した。この提言は「感染拡大抑止」「所得の減少と流動性の不足の軽減」「長期的な産業構造変化の促進」の3点を原則とし、景気対策とするべきではない、と指摘している。

司会 藤井彰夫 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

日銀、100兆円枠創設を

上杉 素直 (日本経済新聞社コメンテーター)

 「集中治療室にいる患者に『ビフテキを食べろ』とか『運動をしろ』と言ってもムリで、必要なのは輸血や酸素吸入だ」。記者会見の冒頭、新型コロナウイルスに揺れる現下の経済を重病患者にたとえてみせた。「歴史的な危機」と強い表現を使いながら、迅速かつ効果的な政策対応を求めた。

 いま必要な経済政策を大きく3つに分類した。まずは感染拡大の防止に向けた取り組みだ。医療従事者への感染を防ぐためオンライン診療を普及させ、仕事や学校もなるべくインターネット経由へと切り替えられるようにする。感染していないかを調べる検査体制を充実し、軽症者や無症状感染者を収容する施設として旅館やホテルを借り上げる。

 そのうえで、経済へのショックをいかに和らげるか。会場からも賛否の声が出たのは、日銀が上場投資信託(ETF)や株式を買い入れるために100兆円の枠を創設するアイデアだ。一歩間違えばモラルハザードの危険もはらむが、国内総生産(GDP)の2割に匹敵する大きな金額を示すことで「マーケット心理を落ち着かせる効果がある」と強調した。

 政府が検討中の緊急経済対策は「政策の目標がまぜこぜになっている」と指摘した。家計に現金を配るのであれば、コロナ問題の影響で収入が激減するなど生活に困窮する世帯にターゲットを絞って手厚く渡すべきだ。そんな考えに繰り返し言及した。マイナンバーを活用して返済を確かにする緊急融資など、ユニークな制度も提唱した。

 政界の一部にくすぶる消費税率の引き下げにはあくまでも反対の立場を訴えた。消費税率引き下げで足元の消費マインドが急激に高まると、街が買い物客であふれ、結果的にウイルス感染のリスクを高めかねない。高齢化社会を乗り切るために老若男女が負担する消費税は中長期の「社会構造の形」であり、短期の景気刺激のためにいじるべきではないと力を込めた。


ゲスト / Guest

  • 小林慶一郎 / Keiichiro Kobayashi

    日本 / Japan

    慶應義塾大学客員教授 / visiting professor, Keio University

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:4

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