2020年03月17日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「新型コロナウイルス」(3) 宮本雄二・元駐中国大使

会見メモ

元駐中国大使の宮本雄二氏が登壇し、「新型コロナウイルス激震中の中国と世界」と題し、新型コロナウイルスが中国や日中関係に与えた影響などについて話した。

宮本氏は2006年から10年まで駐中国大使を務めた。

中国政府の新型コロナウイルスへの初動について、習近平政権で権力の集中が進んだことで、現場が自分の責任で対応する力が弱まったと指摘していた。

 

司会 坂東賢治 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

習政権に大きな衝撃/「義」重んじる国民の不満表出

加藤 千洋 (朝日新聞出身)

 新型コロナウイルス禍の震源地となり、すでに感染者8万人超、犠牲者3200人超が出た中国の現状について、宮本氏は「2003年のSARS禍とは別種の脅威で、大きな衝撃となった」と語り、その上で習近平政権に与える内政・外政上の影響についての分析を披露した。

 まず内政面で「共産党政権と国民の関係に大きな影響を与えている」とし、「国民の価値観、判断基準は依然として『義』にあり、共産党といえどもそれを抑え込むことは難しい」など、改革開放以降40年の中国に関わり続けてきた老練外交官ならではの見方を示した。

 具体的には1千万都市・武漢の封鎖、情報統制の強化といった強硬措置に対し、自らの生命と安全にかかわる問題と認識した国民は大きな不安と不満を抱いた。武漢の医師がいち早く感染症の危険を指摘したにもかかわらず警察から処分を受け、自らも感染し亡くなった。その悲劇が当局への国民の強い義憤を引き起こした。ネット上の当局批判の投稿が削除されても、転載の繰り返しで拡散が止まらないといった現象にも現れていると指摘。「共産党といえども国民が『ノー』ということには従わざるを得ないということがはっきりしたのではないか」と強調した。

 今後は傷んだ経済のダメージ回復と社会の安定維持が焦点だが、この間政権が取り組んできた「投資主導から消費主導の成長へ」の構造転換はなお道半ばであり、「消費低迷の中、追い込まれたら何でもありの政策をとる可能性も」と指摘した。

 宮本氏は今回の事態が外交政策での「路線修正」につながる可能性にも言及。焦点の対米関係では、今後も相当期間にわたり米国との共存が模索されるが、その際に「いまの軍拡路線に修正が加わるかがカギとなる」と語った。

 質疑で問われた日中関係については、「唯一の選択肢は好ましい協力関係の維持であり、そのためにも(延期された)習主席訪日の実現が望ましい」と期待を表明した。


ゲスト / Guest

  • 宮本雄二 / Yuji Miyamoto

    日本 / Japan

    元駐中国大使 / former ambassador to China

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:3

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