会見リポート
2020年07月31日
14:00 〜 15:30
10階ホール
「米大統領選の行方」(4) アメリカ例外主義のおわり? 三牧聖子・高崎経済大学准教授
会見メモ
最近、米国では、根深く残る人種差別、コロナ危機に対応できない脆弱性が表面化し、「理想を求める強い国家」という「例外国家」としての従来のイメージが揺らいでいる。高崎経済大学の三牧聖子准教授が登壇し、米国の外交政策と大統領選の行方について語った。
司会 杉田 弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
会見リポート
不介入主義、党派越えた合意に
杉田 弘毅 (共同通信社特別編集委員)
アメリカは例外的な国だ。自由民主主義の多民族「理念国家」としてスタートし、大洋に守られた豊かな国土、圧倒的な経済力と軍事力を誇る。もう一つの例外国家ソ連は崩壊し、中国は強権国家として過去の中華帝国の道をなぞっているだけのように見える。
だが、そのアメリカの例外主義が終わり、巨大な「普通の国」になるのではないか。いやまだアメリカの唯一無比性は変わらない、衰退は一時的だ。そんな複雑な思いをアメリカ・ウオッチャーたちは抱いている。
アメリカ外交を研究する三牧氏の会見は、アメリカの曲がり角を捉え、さまざまな観点から示唆を投じた。
まず、米外交の例外性の背景にある理念の伝播という使命感について、トランプ大統領は「政策、レトリックの双方で放棄した初の大統領」と位置付けた。それは三牧氏が研究してきた、例外主義を内外に宣言したウィルソン大統領以来ちょうど百年の節目となる。
代わってコンセンサスとして浮上しているのが「不介入主義」だ。他国のことより国内問題に取り組むべきだ、同盟国は安全保障のコスト負担を、といった声は党派を超えて広がり、米国は「穏当な国際的役割」に限定すべきという点で合意ができつつある。保守、リベラル双方の出資を得て非介入外交を唱えるシンクタンクも登場した。
こうした変化は、Z世代(1997年以降に誕生)の影響力の高まりに負うところが大きい。この世代の特徴である「多様性」と米国衰退の認識が相まって「米国は他国と協調し、敵をつくらず、国益を追求する」という論が強い。新自由主義の犠牲となったとの意識から、社会主義を評価するのも新しい傾向だ。
BLM運動・銅像破壊の評価、そして米国の道義性など、議論は幅広く、変わるアメリカを圧縮したような濃厚な1時間40分であった。米国研究の新たな地平が切り開かれているのを感じた。
ゲスト / Guest
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三牧聖子 / Seiko Mimaki
高崎経済大学准教授 / Associate Professor, Takasaki City University of Economics
研究テーマ:米大統領選の行方
研究会回数:4