2020年03月09日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「プーチンのロシア」(2) 小泉悠・東京大学特任助教

会見メモ

ロシアのトップを20年間続けるプーチン氏がもたらした変化や今後のロシアについて、シリーズで聞く。

 

シリーズ第2回は、『ロシアの地政学』(東京堂出版、2019年)で昨年第41回サントリー学芸賞(社会・風俗部門)を受賞した小泉悠・東京大学特任助教に、軍事・安全保障面でのこの20年間の展開を聞いた。

『ロシアの地政学』(東京堂出版、2019年)

 

司会 杉田弘毅  日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

倫理軽視の武力行使が「強み」

真野 森作 (毎日新聞社外信部)

 「ロシアの目標は消極的な意味での勢力圏維持だ」。シリーズ企画「プーチンのロシア」第2回に、軍事・安全保障面を切り口とした気鋭のロシア・ウオッチャー、小泉悠・東京大学特任助教が登壇した。

 会見前半ではソ連崩壊から現在までのロシアの安保観の変遷を紹介。当初のエリツィン政権はソ連崩壊の結果を受け入れる路線をとったが、北大西洋条約機構(NATO)の拡大が続く。そこで登場したのが、大国間の協調で世界秩序が作られるべきと主張するプリマコフ外相の「多極世界」路線だった。エリツィン氏の後継として2000年5月、大統領に就任したのがプーチン氏。「この20年間にプーチン政権の安全保障への姿勢は大きく変遷している。初期は今ほど西側に敵対的ではなかった」と指摘する。

 イラク戦争、ジョージア(グルジア)戦争、アラブの春などを経て、「ウクライナ危機前からロシアは『新しいタイプの戦争』に備え始めていた」とみる。「ロシアの軍事力は米国には匹敵しないが、問題は誰と戦ってきたか。ウクライナなど『旧ソ連の裂け目』を中心に軍事力を行使するには十分な実力がある」

 シリア内戦への介入については「ロシアは無差別爆撃のような残虐性で大きな戦果を出した」と述べ、倫理的な縛りの弱さを「強み」としている特異性を指摘。さらに、「ロシア軍が偵察、指揮・通信、必要な精密爆撃を提供し、地上戦力は現地の勢力に任せる」という「限定行動戦略」をとっていると解説した。「ロシアの軍事力をミリタリー・バランスでは測れない時代。曖昧性の見極めは今後もっと難しくなるだろう」と言う。ポスト・プーチンに関しては「24年に大統領を辞めても政治的有力者であり続けると思う。ウクライナ問題、北方領土問題などロシアと西側の対抗軸は消えてはいかないはずだ」と予測する。 


ゲスト / Guest

  • 小泉悠 / Yu Koizumi

    日本 / Japan

    東京大学特任助教 / Assistant Professor, Tokyo University

研究テーマ:プーチンのロシア

研究会回数:2

ページのTOPへ