会見リポート
2019年11月14日
15:30 〜 17:00
9階会見場
著者と語る『徴用工裁判と日韓請求権協定-韓国大法院判決を読み解く』青木有加・弁護士
会見メモ
『徴用工裁判と日韓請求権協定-韓国大法院判決を読み解く』(現代人文社、2019年9月)執筆者の一人である青木有加弁護士が、日韓請求権協定の締結過程や、協定をめぐる日韓双方の解釈の変遷について話した。
司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)
会見リポート
問題解決には日本企業の取り組み重要
五味 洋治 (企画委員 東京新聞論説委員)
「裁判の原告たちが移動した道のりを想像しながら、読んでいただきたいと思い、本に載せました」
青木有加弁護士は、会見の冒頭に1枚の地図を映しだした。ソウル、釜山など朝鮮半島の地名と日本各地にあった製鉄所や工場が書き込まれている。戦争中、日本に来た若者たちの出身地と勤務地を示したものだ。
この中にはまだ十代の子供も含まれていた。学校に通える、技術が学べると言われ、それを信じて来たのに、待っていたのは過酷な労働で、賃金も十分もらえなかった。原告たちの晴れない思いが、国境のない地図から浮かんでくるようだった。
昨年10月、韓国の大法院(最高裁)が、戦時中の徴用工を巡り日本企業に賠償を命じる確定判決を出した。そこから日韓関係は、あっと言う間に悪化し、好転の気配が見えない。
「解決済みの問題を蒸し返した」と日本で受け止められているこの判決を、丁寧に読み解いてみようと日本の弁護士6人が手分けをして書いたのが、「徴用工裁判と日韓請求権協定」(現代人文社)だ。
この問題は裁判所の判決というだけではない。人権問題、戦後賠償、国と国との関係を扱う国際法も絡む。
それだけに、いきなり判決文から入るのではなく、判決に至るまでの経緯や、徴用の実態、判決の前提となっている請求権協定の中身などをQ&A形式で平易に解説している。
原告はまず、日本で訴訟を起こしたが敗訴、その後韓国でも裁判で訴えた。青木弁護士が注目しているのは、全く違う結論になった双方の国の判決に、実は共通項があることだ。
「日本の判決も強制労働の違法性や責任を認定しています。そこを重視して解決を模索するのが重要」。そして、「問題解決のために(被告の)日本企業が前向きに取り組めば、むしろ国外で評価を受け、メリットが大きいはず」と、企業の自主的な取り組みを促した。
ゲスト / Guest
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青木有加 / Yuka Aoki
日本 / Japan
弁護士 / attorney at law
研究テーマ:『徴用工裁判と日韓請求権協定-韓国大法院判決を読み解く』