2019年10月25日 15:30 〜 17:00 10階ホール
「<表現の不自由展・その後>のその後」(3) 横大道聡・慶應大学大学院教授

会見メモ

憲法学者である横大道聡・慶應大学院教授が登壇し、「表現の不自由展・その後」の展示中止、文化庁による補助金の全額不交付など「あいちトリエンナーレ2019」を巡る一連の問題についての法的解釈、日本における「表現の自由」の現状について語った。

 

司会 坪井ゆづる 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)

 

慶應義塾大学研究者情報データベース 

 

YouTube会見動画

会見詳録


会見リポート

文化庁の補助金不交付を批判/「十分違法となる余地ある」

横田 弘幸 (読売新聞出身)

 憲法学者としての視点から問題点を整理した横大道聡教授の会見。国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」への文化庁の補助金不交付決定の取り消しを求めた訴訟になれば、判決では「(文化庁の裁量権の逸脱として)十分違法となる余地はある」と踏み込んだ見方を示し、注目された。

 この中で横大道教授は、補助金交付については文化庁にある程度の裁量が認められるが、「好き勝手」が許されるわけではないとし、「裁判になれば、今回、文化庁がどこまで事態を調査して全額不交付としたのかが問われる」とした。具体的には、「表現の不自由展・その後」の事業費やスペースは「あいちトリエンナーレ」全体の1%に満たない点、全体としての事業は継続していた点などをあげ、全額不交付を疑問視した。

 また、「表現の自由」に関連して、文化庁がその重要性をどこまで踏まえて判断したかも問われるとの見方を示した。

 一方、実行委員会による中止決定については、憲法で禁止される検閲は、主体を「行政権」とするなど、判例で厳密に定義づけられていると述べ、「検閲には当たらないことは明らか」とした。

 また、一般論として、芸術展への公金支出は展示作品に対する賛否を示すものとはとらえられないと指摘したが、知事が会長を務めるあいちトリエンナーレ実行委員会の組織体制については、「政治とイベントの分離が不十分だった」と批判。その結果、「『不自由展』の作品のメッセージを県、市が容認しているように見えたのも事実」と苦言を呈した。

 今回の「不自由展」は、文化庁の補助金の不交付という“おまけ”まで付いたことで、波紋の輪をいっそう広げている。愛知県が司法の判断を求めることになれば、芸術への助成の在り方を考える上で重要な裁判となるのは間違いなさそうだ。


ゲスト / Guest

  • 横大道聡 / Satoshi Yokodaido

    日本 / Japan

    慶應義塾大学法務研究科(法科大学院)教授 / Professor, Keio University Law School

研究テーマ:「<表現の不自由展・その後>のその後」

研究会回数:3

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