2019年11月28日 14:30 〜 15:30 9階会見場
中尾武彦・アジア開発銀行(ADB)総裁 会見

会見メモ

来年1月に退任する中尾武彦ADB総裁が登壇し、7年にわたる在任期間を振り返りながら、アジア経済の現状と今後のADBの在り方について話した。

司会 西村陽一 日本記者クラブ企画委員長(朝日新聞)


会見リポート

中国は所得格差是正が課題/「アジア・コンセンサス」はない

伊集院 敦 (日本経済研究センター首席研究員)

 1月16日の退任を前に、約7年の在任期間を振り返りながらアジア経済に関する見解を包括的に語った。

 「アジアは安定して成長している」。インドなどの潜在力に触れつつも、話題の中心はやはり世界第2位の経済大国となった中国だった。最近は減速傾向が見られるものの、国内総生産は日本の3倍近くになり、「予想以上に成長している」との見方を示した。

 中国経済は金融、過剰生産、米中摩擦など多様なリスクを抱えるが、中国の指導者に一番言いたいことに所得格差の是正を挙げた。この問題をうまく処理できなければ政権への信頼性維持が困難になると指摘した。

 総裁在任中には中国主導で設立されたアジアインフラ投資銀行(AIIB)との関係を問われることが多かった。両行は補完関係にあるとする一方、経済の自由化を柱とするワシントン・コンセンサスの有効性を主張し、国家主導のアジア・コンセンサスのようなものはないと断言した。市場の役割を重視し、経済発展の主役は民間であるべきとの考えに基づく発言だ。

 ADBが1966年に設立されて半世紀余り。中尾氏を含め歴代9人の総裁はすべて日本人で、後任には財務省前財務官の浅川雅嗣氏の就任が決まった。これに関しては日本の貢献が認められているとの見方を示し、「日本が地政学的利益を求めないことにクレディビリティ(信頼性)があるのではないか」と語った。

 もっとも世界は近年、経済と安全保障が一段と密接に絡み合うようになっている。中国が「一帯一路」構想を推進すれば、日米は「自由で開かれたインド太平洋」構想を掲げる。両者は対立関係にないと説明されるが、成長センターのアジアも分断のリスクを抱える。地政学リスクなどにどう対処し、地域の経済発展を実現するか。ADBは1月15日にアジアの開発史に関する英文リポートをウェブで発表するという。


ゲスト / Guest

  • 中尾武彦 / Takehiko Nakao

    アジア開発銀行総裁 / President, Asian Development Bank

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