会見リポート
2019年10月11日
14:00 〜 15:00
10階ホール
上野愛咲美・女流棋聖 会見
会見メモ
男女問わず300人以上の棋士が参加した第28期竜星戦で準優勝を果たした上野愛咲美女流棋聖(17)が、師匠の藤澤一就八段とともに登壇した。上野女流棋聖は2016年にプロ入りし、昨年、歴代最年少で女流棋聖を獲得し、今年初防衛した。
司会 小川記代子 日本記者クラブ企画委員(産経新聞)
壇上は左から米島雅孝共同通信囲碁担当記者、藤澤一就八段、上野愛咲美女流棋聖、小川記代子日本記者クラブ企画委員。
会見リポート
女流初のタイトル戦準優勝/「男女差、感じたことない」
丸山 進 (毎日新聞社学芸部)
囲碁や将棋の世界では、女流棋士が男性棋士を押しのけてタイトルを取ったことはなく、男性が優位なゲームだと思われてきた。9月、囲碁界に異変が起きた。全ての棋士に参加資格のある棋戦ではこれまで、女流棋士は8強入りが最高だったが、上野愛咲美女流棋聖(当時17)は竜星戦でタイトルホルダーら男性トップ棋士を連破し、準優勝を果たしたのだ。
囲碁は本当に男性優位のゲームなのか。上野女流棋聖は「男女差を感じたことはない」という。そして、「男の人はすごく熱心に、とことん研究するというイメージがあった。男の人のように、とことん研究すれば追いつける」と考えて、今はプロを超える実力を持つAI(人工知能)で研究を積み、実力を高めた。
強さの特徴は、「ハンマー」と呼ばれる積極的な攻め。相手の石を攻め取る展開を得意とし、逆に1目を争うような細かい碁は好まない。竜星戦のような持ち時間の短い「早碁」は隙が生まれやすいが、持ち時間の長い棋戦では細かい碁になりやすい。実際、上野女流棋聖は7大タイトル戦で本戦入りを果たしておらず、早碁以外の7大タイトル戦でも結果が残せるかが今後の課題になるだろう。
最近の女性若手ゲストでは全英女子オープンゴルフで優勝した渋野日向子選手(当時20歳)を思い出す。上野さんも渋野さんのように大舞台でも緊張を見せず、むしろ笑顔を絶やさない。上野女流棋聖を破って女流棋士の棋戦初優勝を阻んだ一力遼八段は「自分が17歳でNHK杯決勝に出た時は、緊張してうまく打てなかった」と言い、緊張感を見せず、むしろ自身を投了寸前にまで追い込んだ上野女流棋聖の大胆さに舌を巻いていた。
翌日の各紙は、決勝戦で敗れた上野女流棋聖の満面の笑みが紙面を飾った。「笑顔のシンデレラ」が囲碁界でも誕生した。
ゲスト / Guest
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上野愛咲美 / Asami Ueno
女流棋聖 / Go player