2019年08月01日 15:30 〜 17:00 10階ホール
「英新政権とEU離脱を占う」庄司克宏・慶應義塾大学教授

会見メモ

英保守党党首選で離脱強硬派のボリス・ジョンソン前外相が当選、イギリスの新たな首相に就任した。ボリス・ジョンソン首相の下、離脱交渉はどう進むのか。EUの法と政策研究の第一人者である庄司教授がブレグジットの行方とEU統合の展望を語った。

 

司会 鶴原徹也 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

 

慶應義塾大学研究者情報データベース

『ブレグジット・パラドクス』(2019、岩波書店)

YouTube会見動画

会見詳録


会見リポート

解散総選挙の先は考えなし

郷 富佐子 (朝日新聞社論説委員)

 英国でジョンソン新首相が誕生してから1週間余。水晶玉を凝視してもなーんにも見えない状況のなか、ブレグジットの行方を占ってもらえるとはありがたい会見である。

 ポピュリスト、日和見主義、ギャンブラーともいわれるジョンソン氏が(少なくとも現時点で)描く近未来図は何なのか。庄司氏は、以下のようなシナリオを示した。

 EU離脱協定の再交渉は、EU側が拒否して成立せず。ならばと「公約」通り、10月31日に合意なしで離脱に踏み切る。保守党内の強硬離脱派は喜び、国民は「本当に離脱した!」と驚く。その熱が冷めないうちに、解散総選挙へ。ブレグジット党の封じ込めに成功し、保守党は過半数を維持。ジョンソン政権は継続。めでたしめでたし――。

 だが実際には、合意なしやソフトな離脱、EU残留などの「政策目標」と、離脱延長から総選挙、再国民投票まで含む「手段」を組み合わせた想定シナリオは何十も存在する。

 では、どれが一番、ありそうなのか。この直球質問への答えは、「ジョンソン氏はたぶん、(EU離脱後)間髪入れずに総選挙にいく。その先のことは考えていない」。やはりそうかと、ため息が出た。

 考えていなくても、現実には「その先」がある。たとえ合意なし離脱を果たしても、英国は結局、EUとの間で長期的な措置が必要となる。新たな自由貿易協定にこぎ着けるには、何年もかかるという。

 庄司氏は、近著で「合意なき離脱をしても一時的であり、EUに再加盟することになるだろう」との見方を示している。それまでには「なぜEU加盟をしたのか」を考え始め、「経済的な利益があるからだ」と気づくまでの時間が必要で、10年くらいはかかるのではないかという。

 そのころ、英国は、ポピュリズムに揺れる欧州は、どうなっているのだろう。


ゲスト / Guest

  • 庄司克宏 / Katsuhiro Shoji

    日本 / Japan

    慶應義塾大学法務研究科(法科大学院)教授 / Professor(EU Law & Policy), Keio University Law School

研究テーマ:英新政権とEU離脱を占う

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