2019年09月25日 13:30 〜 14:30 10階ホール
「プラットフォーマー規制の論点」(5) 吉田浩一郎・新経連理事(クラウドワークス代表取締役社長CEO)

会見メモ

楽天、サイバーエージェントなどITビジネスをはじめ様々な新産業企業が加盟する新経済連盟(三木谷浩史代表理事)の吉田浩一郎理事(クラウドワークス社長兼CEO)に、プラットフォーマー政策の在り方を聞いた。

新経連は吉田理事を中心に、プラットフォーマー規制と競争政策についての提言「海外デジタルプラットフォームを巡る諸課題と対応策」をまとめ、今年3月末に経産省などに提出した。提言は「イコールフッティングの確保や課税面など、 競争環境整備は急務。プラットフォームはイノベーションの源泉であり規制には慎重であるべき。問題は国益をかけた越境経済下の競争政策であり日本の産業政策」と主張している。

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

PF界の「負け組」日本

鳴海 崇 (毎日新聞社経済部編集委員デジタル取材班)

 企業戦略や最新技術が産業を牽引し、何らかの不祥事が起これば世界同時株安にもつながる。グローバル市場で展開するプラットフォーマー(PF)、例えば米国のGAFAや中国のBATの影響力は凄まじい。そして残念ながら日本企業の姿はそこになく、それどころか国内でも特にGAFAが急速に進出。利便性が高いため、今や存在しなければ生活レベルが落ちるような感覚すら抱く。

 なぜ日本はPF界で「負け組」に陥ったのか。楽天の三木谷浩史会長兼社長率いる新経済連盟で理事を務める吉田浩一郎氏によれば、それは当然の帰結だった。海外企業より法律の適用や執行が厳しく、対策コストがかさむ。スマートフォンが当たり前の時代に、アプリストアはアップルとグーグルの寡占状態で、そこにコンテンツのアプリ売上に基本30%の手数料を課しているため企業は利益が大幅に圧縮されている。海外企業が課税を逃れていることも踏まえると、再投資の原資には大きな格差が生じているとみられる。

 PFを巡っては、競争や課税、個人情報の取り扱いなどに関する各国共通のルールが確立されるか注目されている。吉田氏の提案で興味深かったのは、日本でビジネスを展開する場合に顧客情報などを国内サーバーに保存するよう義務づける施策だ。事業の展開を裏付けるため、課税や規制から逃げられなくする根拠になり得るし、何より消費者も個人情報が海外に流出する不安が和らぐ。

 PFの世界市場席巻は米国発で始まった。その後は中国が保護主義的な国内産業育成、EUは個人の権利保護と、各国がPFに対する独自のスタンスを明らかにしてきたが、いずれも政府と民間が一体で取り組んでいるのが特徴だ。出遅れた日本ではあるが、間もなく始まる5Gでデータ流通量は数百倍に増える。今こそ官民が歩調を合わせ、巻き返すべき時期だろう。


ゲスト / Guest

  • 吉田 浩一郎 / Koichiro Yoshida

    日本 / Japan

    新経済連盟理事(クラウドワークス代表取締役社長CEO) / director, Japan Association of New Economy

研究テーマ:プラットフォーマー規制の論点

研究会回数:5

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