2019年07月23日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「米・イラン 軍事的緊張と核合意の今後」渡部恒雄・笹川平和財団上席研究員/坂梨祥・日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究理事

会見メモ

世界のエネルギーが集中するペルシャ湾で、イランとアメリカの軍事的緊張が高まり、「一触即発」の危険な状況だ。イラン政府は、アメリカの経済制裁で「核合意」の約束が守られていないとして、ウランの濃縮度を引き上げ、「核合意」の存続が危ぶまれる事態となっている。危機の回避は可能か。アメリカの専門家である渡部恒雄・笹川平和財団上席研究員とイランの専門家である坂梨祥・日本エネルギー経済研究所中東研究センターセンター長代行の2氏が登壇し、現状を分析するとともに、軍事的緊張と核合意の今後の見通しについて語った。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 


会見リポート

原油輸出なく「核合意」維持は困難/「有志連合」参加、日本は慎重に

出川 展恒 (NHK解説主幹)

 ペルシャ湾の軍事的緊張は、この地域にエネルギーの大部分を依存する日本にとって、「対岸の火事」ではない。日本の海運会社が運航するタンカーも攻撃対象となり、トランプ政権からは、ホルムズ海峡の航行の安全を守る「有志連合」への参加を求められている。イラン、アメリカの政治・外交に精通する二人の専門家が、両者の行動の動機を分析し、日本の役割について提言した。

 坂梨氏(左)は、「イラン核合意の存続は可能か」という質問に対し、イラン・ロウハニ政権が、ウラン濃縮度を引き上げ始めた真意は、核合意を崩壊させることではなく、核合意を維持することにあり、ヨーロッパ諸国もそれを理解している。このため、核合意が明確な形で崩壊するというよりも、イランの経済的利益が確保されないまま、濃縮活動が少しずつ拡大し、現在の軍事的緊張に、別の緊張が加わってゆくシナリオが考えられる。ただし、イランによる原油輸出と金融取引を可能にする有効な手立てが見いだせなければ、核合意の存続は困難だと指摘した。

 渡部氏(右)は、「トランプ政権が各国に参加を求めている『有志連合』に日本はどう対応すべきか」という質問に対し、性急に結論を出すべきでなく、慎重に判断することが大切だと指摘した。その根拠として、ホルムズ海峡近くでのタンカー攻撃に、イラン政府がどこまで関わっているか不明であること。「有志連合」に参加すれば、友好国であるイランを敵に回し、かえってペルシャ湾の緊張を高める恐れがあること。対イラン政策で、トランプ大統領とボルトン補佐官の間に相違が見られ、民主党政権が復活する可能性もあることなどを挙げた。

 7月以降、イランとイギリスが、相互にタンカーを拿捕するなど、事態が複雑化する中、冷静な情勢分析と慎重な政治判断が不可欠だと痛感させられた。


ゲスト / Guest

  • 渡部恒雄 / Tsuneo Watanabe

    日本 / Japan

    笹川平和財団安全保障研究グループ上席研究員 / Senior Fellow, The Sasakawa Peace Foundation

  • 坂梨祥 / Sachi Sakanashi

    日本 / Japan

    日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究理事 / Acting Head, the Japanese Institute of Middle Eastern Economies (JIME), the Institute of Energy Economics, Japan (IEEJ)

研究テーマ:米・イラン 軍事的緊張と核合意の今後

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