2019年07月08日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「プラットフォーマー規制の論点」(3) 決済ビジネスと仮想通貨 岩下直行・京都大学公共政策大学院教授

会見メモ

 日本銀行出身で、同行FinTechセンターの初代センター長を務めるなどデジタル時代の金融について長く研究をしてきた岩下直行教授が登壇した。フェイスブックの暗号資産「リブラ」構想について「スマホによる銀行口座開設が可能になり途上国に利点はあるが、資金洗浄対策がないのが最大課題」と指摘。「途上国が資金洗浄の抜け穴になれば社会の正義は達成されない。銀行と同等の規制を受ける覚悟が必要」と強調した。

 

司会 藤井彰夫 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)

 


会見リポート

投機性、実用性、透明性 「リブラ」の問題点を指摘

武類 雅典 (日本経済新聞社編集局次長)

 未知の力が現れると、人は必要以上の期待や不安を抱きがちだ。フェイスブックが考案したデジタル通貨「リブラ」に対しても同じである。

 リブラの目標は「国境のないグローバルな通貨と金融インフラになる」ことだ。実現すれば、銀行口座を持たない世界中の貧しい人々にも、国際送金のような金融サービスの恩恵を届けられるかもしれない。

 一方、多くの中央銀行や規制当局は警戒する。フェイスブックのサービス利用者は27億人。金融界の秩序を揺るがす潜在力があるからだ。

 異才の元日銀マン、岩下さんが会見で示した見方は「等身大のリブラ」を知る手がかりになる。日銀在職中から長くデジタル時代の金融を研究しており、専門家の視点からリブラに疑問を3つ投げかけた。

 1つは、リブラの価格が乱高下しないか。投機性がつきまとうことへの懸念である。ドルなどの法定通貨に紐づいていても、価格が合理的に決まるかは分からないという。しかも、不正や事故が起きたときの「責任の所在が明確ではない」。

 ならば、そうした通貨を消費者がわざわざ日々の支払いや買い物に使うのか。これが2つ目の疑問だ。

 最後は、脱税や武器・麻薬取引のための資金洗浄、テロ資金の調達に悪用されないか。重大な論点であり、「銀行と同等の規制を受けるくらいの覚悟と対策が必要だ」と訴えた。

 テクノロジーの可能性を否定しているわけではない。「(フェイスブックの)マーク・ザッカーバーグさんは性善説で取り組んでいると思う。ただ、扱うのはお金。人々の心を惑わせる悪魔だ。善意の人に必ずしも成功を約束しない」。金融の現実を熟知する者として心配している。

 地に足の着いたリアリズムこそ、進歩主義を正しく導く。そんな確信があるのだろう。会見中にリブラの課題をズバズバと指摘した岩下さん。日本記者クラブに寄せた揮毫は「イノベーション推進」だった。


ゲスト / Guest

  • 岩下直行 / Naoyuki Iwashita

    日本 / Japan

    京都大学公共政策大学院教授 / Professor, Kyoto University School of Government

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