2019年04月26日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「日本の労働を誰が支えるのか」(8) 鳥井一平・移住者と連帯する全国ネットワーク代表理事

会見メモ

外国人の権利保護運動を続けてきた鳥井氏が、外国人受け入れ政策の変遷をたどりながら現制度の問題点を指摘した。

「技能実習は廃止すべき」「労使対等原則が担保されないのは奴隷労働と同じ」

実習生に対する目を覆いたくなるような人権蹂躙の事例を挙げ「雇用主も最初は悪人ではない。人を変えてしまうおそろしい制度」と。

労組時代の異名「炎」そのままの熱弁で、「ゆがんだ移民政策からまっとうな移民政策へ」と訴えた。

 

鳥井氏作成レジュメ

移住者と連帯する全国ネットワーク


会見リポート

まっとうな移民政策の導入を

村田 泰夫 (朝日新聞出身)

 30年余り、外国人労働者の支援、救済活動をしてきた鳥井氏ならではの熱い会見だった。まっとうな移民政策の必要性を語った。

 改正入国管理法が4月から施行され、「特定技能」という新たな在留資格が設けられた。政府は「移民政策ではない」として、外国人労働者という言葉を避け、「外国人材」と言い換える。「事実から目を背ける姿勢」がさまざまな問題の根源だと鳥井氏は指摘する。

 改正入管法の審議を通して、日本は外国人労働者なくして成り立たない社会であることが明らかになったのだから、場当たり的な使い捨て労働者としてではなく、共に働く仲間、地域の隣人、社会の担い手として受け入れなければならない、という主張には説得力があった。

 国際貢献を名目に外国人労働者を受け入れる現行の「技能実習制度」は廃止すべきだと力説する。実習という建前から職場を変える自由がない。どんなに労働条件が劣悪でも逃れることができないので、雇用主と実習生の関係は支配と従属の関係になってしまう。賃金未払い、パワハラ、長時間労働などの問題を引き起こすことになる。

 実習生の失踪が問題視されるが、実態は悪徳な雇用主から逃れる方策だという側面がある。実習生からの訴えを受けて、鳥井氏は雇用主と交渉することがある。会ってみると、雇用主の中小企業や農家の経営者は、普通の「いい人」が多い。労使対等の原則がないことが「社長を邪悪な欲望に変貌させる」のだそうだ。

 新たな特定技能制度は、実習生ではなく労働者として受け入れるので、転職できる自由がある。このことは評価できるが、労働者であるなら外国人であっても、国の職業紹介機関であるハローワークを利用できるようにすべきだと提言する。これまで外国人の管理、監視を担ってきた法務省に、外国人労働者の権利を守り、多文化共生社会を築くことができるのか、注視していく必要がある。


ゲスト / Guest

  • 鳥井一平 / Ippei Torii

    特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワーク代表理事 / chair of the board, solidarity network with migrants Japan

研究テーマ:日本の労働を誰が支えるのか

研究会回数:8

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