2019年04月23日 15:00 〜 16:00 10階ホール
中満泉・国連事務次長(軍縮担当上級代表) 会見

会見メモ

 2020年に開催されるNPT(核不拡散防止条約)の再検討会議に話題は集中した。中満氏は「包括的な成果文書がコンセンサスとして出ないことがすぐにNPTの崩壊につながるという見方はしていない」としながらも、「(前回会合に続き)2回連続でなんらかの合意がないと悪しき前例になる。NPT体制のゆがみにもつながる」と懸念。軍縮に関わる義務を定めた「第6条」をすべての核兵器保有国に再認識してもらうことが重要との見解を示した。

 またAIなどの新技術が国際安全保障に与える影響については「非常に大きなインパクトがある」。同分野の軍縮議論では、国際的な条約や合意にとどまらず倫理的な規範や民間企業が守るべきスタンダードも含めた「包括的な議論が必要になる」とした。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

 


会見リポート

核軍縮は安保と直結で追求

禰津 博人 ( NHK報道局国際部)

 中満氏がまず切り出したのは、直面する安全保障状況への危機感だった。

 「冷戦時代の緊張関係に逆戻りする状況。加えて、多極化が進み、複雑で予測不可能になっている」。米ロのINF全廃条約の破棄、北朝鮮・イラン情勢の不透明性など、厳しい核軍縮の状況下で、来年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の真価が問われる。「2回連続で合意できなければ、締約国の分断を拡大させかねない」。NPT体制の重要性を改めて強調する中満氏。一方、急速に進歩する技術が軍事利用される現状にも警鐘を鳴らした。「新しい軍縮・軍備管理が必要ではないか」「NPTが時代遅れという言葉は、アメリカだけでなく各国から聞かれる」

 その最新技術で会場でも関心が高かったのは、AI兵器の問題だ。私もかつて米国ワシントンで、国防総省傘下の軍需産業展を取材したことがある。展示場に並ぶ、自動操縦可能な軍用車両などはアフガニスタンやイラクの危険な戦地で運用を想定しているとして「最新技術が兵士の命を救う」と誇らしげに説明を受けた。当時、アメリカの先端技術に驚かされたが、そのAI兵器が国際社会で議論となっている。人の命を奪う武力行使の決定を、機械に任せていいのか。中満氏は、AIのポテンシャルを評価する一方、「大きなインパクトがあり、紛争を拡大させかねない」と指摘する。だからこそ国連の枠組みを超え、民間の研究者や倫理面も含めた包括的な議論が必要と訴える。

 中満氏の会見では、現実的アプローチで、議論を深めたいという力強い意思も感じられた。「核軍縮は理想論で終わってはいけない。安全保障と直結して追求すべきだ」

 いま国際社会では、アメリカをはじめとする自国第一主義が蔓延する中、多国間主義が危機に瀕しているといわれる。中満氏はそれを認めつつも、「各国首脳からは多国間主義の重要性が聞かれる。国連も痛みを伴った改革が必要」と強調した。

 トランプ時代の世界に、国連がどう向き合うのかも注目だ。


ゲスト / Guest

  • 中満泉 / Izumi Nakamitsu

    国連事務次長(軍縮担当上級代表) / Under-Secretary-General and High Representative for Disarmament Affairs

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