2019年04月12日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「平成とは何だったのか」(21) 番匠幸一郎・元陸上自衛隊西部方面総監

会見メモ

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

日本の安保転換期を指揮 「自衛隊は強くあるべし」

谷田 邦一 (朝日新聞社専門記者(防衛担当))

 平成の時代は、日本の安全保障にとっても転換期だった。「存在する自衛隊」は冷戦後、危険な任務のために海外に派遣され、ミサイルや核の脅威とも向き合うようになった。

 激変する日本の防衛や国際協力の現場で、番匠幸一郎氏は指揮官として「行動する自衛隊」を率いたり周到な戦略を練ったりしてきた。

 初の戦地派遣となったイラク人道復興支援活動では初代部隊長を務め、東日本大震災のトモダチ作戦では災害支援を巡る米軍との橋渡し役を担った。中国の海洋進出に伴う南西諸島防衛では、立案だけでなく作戦の総責任者として部隊整備に尽力した。

 イラク派遣を振り返って、「ライオン(軍事組織)がロバの仕事(人道活動)をした」と語る。

 装甲車で市街を走る隊員たちは、民衆ににこやかに笑って左手を振っても右手は機関銃の引き金に当てたまま。過酷な現地で隊員を統率するために重視したのは「GNN」(義理・人情・浪花節)の合言葉だった。

 一発の弾も撃たず一人の犠牲者も出さずに任務完遂できたのは、番匠流の工夫やユーモアがあってこそのことだろう。

 「自衛隊は強くなければならない」が現職時代からの固い信念だ。厳しい訓練を通し精強さを見せてこそ、潜在的な脅威を抑止し平和が保たれるという現実論に立つ。

 時代はポスト冷戦から、ポスト・ポスト冷戦へ。今後の自衛隊はどうあるべきか。サイバーや宇宙など新たな空間が加わり安全保障環境は一層複雑さを増す。

 米軍の知人から教わった言葉を紹介した。「Think unthinkable(考えられないことまで考えよ)」。あらゆることを想定して将来に備える。それが今後を生き抜く知恵だと締めくくった。不透明な時代にこそ、最前線にいてほしい指揮官である。


ゲスト / Guest

  • 番匠幸一郎

    日本 / Japan

    元陸上自衛隊西部方面総監

研究テーマ:平成とは何だったのか

研究会回数:21

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