2019年04月22日 13:00 〜 14:15 10階ホール
「日本の労働を誰が支えるのか」(7) 移民に関する国際調査報告

会見メモ

米国の世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」は昨年、27か国で移住に対する意識調査を実施した。「トランプ政権発足以後、卒業後米国に残って働く留学生数の伸びは縮小し、定住する難民も激減した」。移民増に消極的な国でも高技能人材への期待は大きい。「自国に来る移民は習慣や生活様式に適応しようとしている」と回答した人の割合は日本が最多だった。

 

司会 土生修一 日本記者クラブ専務理事・事務局長

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)

 

「ピュー・リサーチ・センター」

ネイル・ルイス氏


会見リポート

「受入は今のペースで少しずつ」 日本人の移民意識調査

原田 健男 (山陽放送出身)

 米国の世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」が2018年春、27カ国で行った移民に対する意識調査結果を発表した。会見したネイル・ルイス氏によると、日本では受け入れる移民の数は「減らすべきだ」は13%、「増やすべきだ」は数%だったのに対して「今と同じ数でよい」と答えた人が58%と27カ国中最も多かった。日本は移民を受け入れた歴史が浅く、移民が大きな社会問題とはなっていない。むしろ人口減で不足する働き手を補うため、これから受け入れていかなければならないことを日本人は知っており、ゆっくりと少しずつ今のペースで受け入れるのなら問題ないとして移民受け入れへの理解を示す人が多数派を占めていることが分かった。

 これに対して中東やアフリカの紛争地帯から逃れた人が押し寄せている欧州大陸では「減らすべきだ」とする人がギリシャで82%、イタリア71%、ドイツ58%と移民への拒否反応を示す人が多くなっている。

 一方、移民大国アメリカでは、「増やすべきだ」とする人が24%、「今と同じ数でよい」が44%いるのに対し、「減らすべきだ」という人も29%いた。トランプ大統領の反移民政策を支持し、移民増加に懐疑的になっている人が3分の1近くいるということである。アメリカでは戦前、日本や中国等からの移民が増えて反アジア人感情を持つ人が増え、結果的に日本人移民を排除する法律までできた。戦後1965年にアジア等からの移民受け入れを再開したが、国民全体に占める移民の比率は1970年の4.7%から2017年には13.6%に増え、しかもメキシコ等ヒスパニックやアジアからの非白人で家族ぐるみの移民が増えている。グローバル化で工場の海外移転等が進み、所得が減っている一部の白人層からの移民への反発がさらなるポピュリズム政治につながらないか心配させられるところだ。


ゲスト / Guest

  • ネイル・ルイス / Neil G. Ruiz

    ピュー・リサーチ・センター アソシエイト・ディレクター(移住・人口統計学担当) / Associate Director, Global Migration & Demography Research, Pew Research Center

研究テーマ:日本の労働を誰が支えるのか

研究会回数:7

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