2019年03月14日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「統計不正問題の深層」(5)飯塚信夫・神奈川大学教授、平田英明・法政大学教授

会見メモ

統計不正問題を専門家2氏が解説。飯塚氏は、名目賃金上昇率の統計処理でベンチマーク更新への対応がなされていない現状を疑問視。平田氏は、霞ヶ関内部の構造的問題を示すとともに、政治問題化を防ぐためには統計担当部署の独立性担保が重要であるとした。

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)

飯塚教授投影資料

平田教授投影資料


会見リポート

「霞が関の統計リテラシーの低さが問題の背景に」

寉田 知久 (読売新聞社編集局次長)

 「統計不正問題の深層」会見シリーズの第5回目に登場した飯塚、平田両氏は、経済統計の専門家の視点でこの問題を分析し、解説した。

 飯塚氏は厚生労働省の「毎月勤労統計」で、東京都内の従業員500人以上の大規模事業所への調査を、本来の全数調査から3分の1を調べる標本調査(抽出調査)に切り替えたことを「こっそり標本調査」と命名。「標本調査でも良かった。(集計時に)3倍にしなかったのが問題だ」という見方に対しては疑問を呈した。様々な条件を考慮して全数調査と標本調査のどちらの方法が適切なのかを判断すべきであり、「何でも標本調査でいいというのは乱暴な議論だ」と主張した。

 また、従業員30~499人の事業所を、従来の「総入れ替え」から「部分入れ替え」へと変更したことの影響については、「賃金が必ず高めになるわけではない」との認識を示した。

 日本銀行で統計作成に携わっていた平田氏は、過去の不正の大半は、調査員による架空報告など調査データを取得する段階で起きたと説明。しかし、今回は霞が関内部での「集計作業」と調査の「企画」の部分で起きた「想定外の不正であり、根が深い」と厳しく批判した。

 さらに、不正が起きた背景には、霞が関内での統計リテラシーの低さ、専門家の育成不足などがあると指摘。その上で、解決策として提案したのは、①統計部署の独立性の担保 ②統計のスペシャリストの養成 ③霞が関の内外との交流、の3点だ。

 「経済分析のための統計は、人間ドックならぬ『国ドック』の大事な基礎情報。その大事さを十分に認識していない」。平田氏はこう嘆いた。指摘のように、質の低い統計による「国ドック」では、日本経済の現状を的確に診断することはできない。今回の不正問題の深刻さを改めて感じた。


ゲスト / Guest

  • 飯塚信夫 / Nobuo Iizuka

    日本 / Japan

    神奈川大学経済学部教授 / Professor, Faculty of Economics, Kanagawa University

  • 平田英明 / Hideaki Hirata

    日本 / Japan

    法政大学経営学部教授 / Professor, Faculty of Business Administration, Hosei University

研究テーマ:統計不正問題の深層

研究会回数:5

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