2019年03月08日 13:30 〜 14:30 10階ホール
「統計不正問題の深層」(4) 厚労省特別監察委再検証の評価

会見メモ

「第三者委員会報告書格付け委員会」は毎月勤労統計調査不正に関する厚生労働省特別監察委員会の報告書について、調査対象である厚労省からの独立性が認められない特別監査委は第三者として不適格であり、その報告書は信用できないとして最低ランク「F」に格付けした。真因究明のためには、不正を生んだ組織的要因に踏み込んで分析するべきだと指摘した。

 

左から齊藤誠弁護士、行方洋一弁護士、八田進二青山学院大学名誉教授、久保利英明弁護士(第三者委員会報告書格付け委員会委員長)、塚原政秀ジャーナリスト、野村修也中央大学法科大学院教授、竹内朗弁護士(同委員会事務局長)

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)

第三者委員会報告書格付け委員会


会見リポート

監察委報告は最悪の「F」

大野 暢子 (東京新聞政治部)

 「統計不正問題の深層」シリーズの第4回は、弁護士ら有志9人の団体「第三者委員会報告書格付け委員会」が、厚生労働省の特別監察委員会がまとめた調査報告を独自に分析し、評価外の「Fランク」と格付けした。2014年から20回にわたり、世の第三者委報告を辛口に評価してきた格付け委だが「満場一致」のFは2度目。弁護士の久保利英明委員長は「新たな委員会をつくり調査をやり直すべきだ」と厚労省を批判した。

 監察委は1月の報告書で、自らを「第三者委員会」と定義。しかし、格付け委は、不祥事があった組織の利害関係者は第三者委に入れないとする日弁連の指針に基づき、監察委の樋口美雄委員長が厚労省所管の機構の理事長である点や、省内にもともとあった監察組織のメンバーや調査内容をそのまま引き継いだ点を捉え、中立性と独立性を否定した。

 格付け委の齊藤誠弁護士は、監察委が意図的に不正が隠されていた実態を把握したにもかかわらず、隠蔽を否定した点に「隠蔽に手を貸したも同然。これまでに扱った中で最低、最悪の報告書だ」と酷評。野村修也中央大法科大学院教授は、原発事故や年金問題などを例に「事務局を他省庁に置いたり、行政から独立した調査組織を国会につくったりする方法もあったはずだ」と語った。

 また、通常国会の会期中だったことが政権へのプレッシャーになり、1月の報告で拙速に隠蔽を否定してしまったことで、追加調査で隠蔽を認めるわけにいかなくなり、市民感覚からずれた認定につながったとの見方も、複数の委員から提起された。

 A、B、C、Dの4段階評価を原則とする格付け委にとって、Dから大きく劣るFは、報告書として評価に値しない「不合格」。「虚偽ではあったが隠蔽ではない」という奇妙な言葉よりも、統計不正に厳しい目を向ける市民の感覚に近いだろう。


ゲスト / Guest

  • 久保利英明 / Hideaki Kubori

    弁護士、第三者委員会報告書格付け委員会委員長

  • 齊藤誠 / Makoto Saito

    弁護士

  • 竹内朗 / Akira Takeuchi

    弁護士、第三者委員会報告書格付け委員会事務局長

  • 塚原政秀 / Masahide Tsukahara

    ジャーナリスト

  • 行方洋一 / Yoichi Namekata

    弁護士

  • 野村修也 / Shuya Nomura

    中央大学法科大学院教授

  • 八田進二 / Shinji Hatta

    青山学院大学名誉教授

研究テーマ:統計不正問題の深層

研究会回数:4

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