2019年03月22日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「朝鮮半島の今を知る」(23)文在寅大統領をどう見るかー文在寅政権の歴史的課題と日韓関係 クォン・ヨンソク一橋大学准教授

会見メモ

クォン・ヨンソク(権容奭)氏が、文在寅政権誕生の歴史的な意味や政治姿勢の背景について解説した。

文大統領が掲げる「親日清算」が日本で反感を持たれていることについて、「韓国語の親日=チニルとは、植民地期に大日本帝国側について支配に手を貸し、私服を肥やした者を称している。現在の日本への姿勢を糾弾しているわけではない。漢字で“親日”と書かれることで誤解が生まれている。<チニル>という言葉を使ってもらいたい」と指摘した。

 

司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)

 

一橋大学研究者情報ページ

『「韓流」と「日流」  文化から読み解く日韓新時代』(NHKブックス)

『運命 文在寅自伝 日本語版』(岩波書店)


会見リポート

「65年体制は限界、改めて議論を」

松本 安二 (共同通信社外信部)

 徴用工問題や慰安婦問題などで対立が深まり「戦後最悪」とも指摘される昨今の日韓関係。だが1970年代に来日し、韓国がどこにあるかも知らない小学校の同級生から「朝鮮人」と呼ばれたクォン・ヨンソク氏は、個人的な体験から今の日韓関係は「史上最高ではないか」と話す。

 文在寅大統領の自伝の日本語版に解説を書いたクォン氏。「日本ではあまり評判の良くない」文大統領だが、韓国では人柄の良さや弱者に寄り添う姿勢が評価され、国民の4割ほどを占めるリベラル層を中心に根強く支持されているという。日本では文政権の強硬な対日政策ばかりが強調されがちで、韓国人の心情に響くという文氏の人柄を知る機会は確かにあまり多くない。

 文大統領が「親日清算」を訴えた3・1独立運動百周年記念式典での演説は日本の一部で反発を呼んだが、クォン氏は「親日(チニル)」という概念が日本では一般的に誤解されていると指摘した。植民地時代に国を売って日本に協力した勢力が解放後、南北分断体制下で清算されなかったため、その残滓をきちんと清算しようということで、現代において日本に近しい人々を排斥するものではないという。日本語で「親日」というと誤解を生みやすいので、メディアでは注釈を付けるか「対日コラボレーター」などと報じるのがいいのではないかとした。

 戦後補償問題で揺れ動く日韓の最大の問題は、日韓基本条約に基づく「65年体制」が限界に来ていることだとみる。条約締結当時、歴史問題は棚上げされたが、「韓国の民主化が進んで棚上げできない状況になり、当事者の人権がクローズアップされるようになった」。最近の対立により双方の「本音が分かったのは悪いことではない」とし、植民地支配は合法か不法かなどの議論を改めてきちんとする必要があると指摘。その上で、日中共同声明のように歴史問題も盛り込んだ日韓の新たな平和友好条約を締結することを提言した。


ゲスト / Guest

  • クォン・ヨンソク / KWON Yonsuku

    一橋大学准教授 / associate professor, Hitotsubashi University

研究テーマ:朝鮮半島の今を知る

研究会回数:23

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