会見リポート
2019年02月13日
10:30 〜 11:30
10階ホール
クリスティアナ・フィゲレス前国連気候変動枠組条約事務局長 会見
会見メモ
日本が「1.5度」目標を達成するカギは、省エネや再生可能エネルギー活用などエネルギー転換にあり、石炭火力発電の新設はすべきではない。日本は石炭火力技術の輸出を続けることで国際的評判を落としている、と警告した。
司会 安藤淳 日本記者クラブ会員(日本経済新聞)
通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)
会見リポート
日本は脱炭素に向けた野心的な長期戦略を
北郷 美由紀 (朝日新聞社)
温暖化対策の新たな国際合意として2015年に採択されたパリ協定。長年にわたる難しい交渉を粘り強くまとめた立役者は、気候変動問題を取り巻く状況が急速に変化していることを強調した。
それはまず、産業革命以前と比べて平均気温の上昇を2度以内に抑えるというパリ協定の目標では不十分だとはっきりしたことだ。その根拠は気候変動の枠組みに関する政府間パネル(IPCC)が昨年出した特別報告書にある。0.5度の違いで、食糧と水の不足で命を落とす人が2~3倍増える。元の土地に住めなくなって移動する人も同じように膨らみ、政治不安も引き起こす。
もう一つの重要な変化は経済との関わりだ。温室効果ガスの排出削減はこれまで経済成長の足かせと見なされてきたが、いまや競争力の源泉となって成長を促してもいる。その素地を作っているのが、規模の拡大と技術革新による再エネ価格の大幅な低下と、車など移動手段の電動化に向かう各国の動きだ。
それでは日本はどうか。フィゲレスさんは石炭火力発電所の新設計画の再考を強く求めた。高効率の最新型の発電所の輸出についても、「石炭の余地はない」と批判。原子力発電の方向性については自国で決めるべきだとしながら、洋上風力と地熱を利用した発電は大幅に増やせると述べた。
温暖化対策のぬるさを、学校を欠席することで訴える欧米の高校生たちの動きも話題になった。日本ではまだ広がっていないものの、将来世代への責任を果たしてこなかった大人たちに国境はない。
脱炭素の流れは環境、社会、経済の3側面が相まって強まっている。異常気象に備えながら競争力につながる技術開発を促すために、日本には野心的な長期目標が必要だと述べた。切迫感を持つのに十分な指摘と分析だった。
ゲスト / Guest
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クリスティアナ・フィゲレス / Christiana Figueres
前国連気候変動枠組条約事務局長 / former Executive Secretary of the United Nations Framework Convention on Climate Change