2019年02月20日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「ポピュリズム考」(2) 吉田徹・北海道大学教授

会見メモ

仏政治とEUが専門。「支持基盤の弱いマクロン政権によるトップダウン改革で国民が反発」、「極右と極左のポピュリズムは、政治的には国家主義とリベラルだが、反グローバルでは一致」、「国民戦線は仏政治で移民と失業を初めて関連づけ支持を伸ばした」。

司会 鶴原徹也 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

『民意のはかり方: 世論調査×民主主義」を考える』(法律文化社)

『ヨーロッパ統合とフランス: 偉大さを求めた1世紀』(法律文化社)


会見リポート

自国主義強める欧州ポピュリズム

板東 和正 (産経新聞社外信部)

 欧州のポピュリズム(大衆迎合主義)勢力が、「自国第一主義」の主張を強めている。英国の欧州連合(EU)離脱論議をテコに「EU叩き」を加速させている状況だ。

 フランスのマクロン政権とイタリアのポピュリズム政権の関係が険悪化するなど、最近、欧州におけるさまざまな局面で、ポピュリズムという「存在」が注目されている。

 吉田徹・北海道大学教授は、今後のEUの将来に密接な関わり合いを持つポピュリズムについて論じた。「そもそも、ポピュリズムとは何なのか?」という疑問から丁寧に掘り下げた。

 ポピュリズムは、人民の名に基づく反エリート運動と定義される。ポピュリズムは、社会の在り方が大きく揺らぐ転換期に出現するとされ、19世紀末の米国における人民党の勃興が一つの例だ。国際政治を動かす大きなうねりではあるが、吉田氏は「ポピュリストが自分でポピュリストだということはない」と指摘する。「ポピュリズムというのは、政治上の相手を揶揄する言葉だ」という。

 有権者の関心に応じて主張が変わり一貫性が無いとも批判されるポピュリズム。その反面、ドイツのメルケル首相の引退表明など欧州の政治に確実に影響を与えている。

 ポピュリズムが今後、欧州でより大きな影響力を発揮するか否かは、英国のEU離脱の今後に大きく関係するだろう。

 「EUに不満を持つ人々の手本となるよう、英国にとってよい形で交渉が終わることを期待する」

 EUに懐疑的なポピュリズム政党が台頭するイタリアのサルビーニ副首相兼内相はそう言い放ったという。

 英国の状況を見極めて、「EUの離脱ドミノ」が加速する見方もある。ポピュリズムがEUの脅威となるのか、欧州各国の今後を見守りながら注視していく必要がありそうだ。


ゲスト / Guest

  • 吉田徹 / Toru Yoshida

    日本 / Japan

    北海道大学教授 / Professor, Hokkaido University

研究テーマ:ポピュリズム考

研究会回数:2

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