会見リポート
2018年12月19日
15:30 〜 17:00
10階ホール
著者と語る『知ってはいけない2 日本の主権はこうして失われた』矢部宏治・ノンフィクション作家
会見メモ
会見リポート
「日米関係の闇、乗り越えられる」
五味 洋治 (東京新聞論説委員)
日米間の密約については、民主党政権下の2010年に外務省と、外部の有識者委員会の検証が行われ、核の持ち込みなどについて密約があったことが確認されている。
問題は、この調査で終わったわけではない。日本が主権を失い、米国に従属しなければならないという「おかしな関係が続いている」(矢部さん)のは、日米安保条約や、日本における米軍基地や軍人の地位を定めた「日米地位協定」の成り立ちや、構造にある。
矢部さんの問題意識はここから出発している。
そして分かりにくい日米関係の資料を改めて読み込み、そのからくりを丁寧に説き明かしてきた。
近著の『知ってはいけない』(講談社現代新書)の1、2はいずれもベストセラーとなっているが、日米関係が引きずってきた「闇」の部分を知りたいという人が多い証拠だろう。
矢部さんの話の中で、最も印象に残ったのは、日米安保条約が1960年に新安保条約に改定された時のことだ。同時に「日米行政協定」も「日米地位協定」に変えられ、不平等は解消されたとされてきた。
しかし実は、米国側は「協定の見かけを変えるだけであり、実質的な変更は行わない」ことを絶対条件として日本側に提示していた。これは公開された米国の外交文書にもはっきり書かれているという。
そして、この条件下で進められた安保条約の改定交渉過程において、日米間で「討議の記録」というものが交わされる。
これこそ「密約中の密約」(矢部さん)であり、核の日本への持ち込み、米軍の他国攻撃密約につながり、これらの問題は、非公開で行われる日米間の協議に委ねられ、表から見えなくなってしまう。
「これこそ、米軍に異常な特権をもたらす日米安保の法的構造だ」と矢部さんは、独自に作成したチャート図を示しながら説明した。
ただ、「日米間の闇はそう深いわけではなく、絶対に変えられない壁ではない。それなりの政治家が出てくれば十分変えられる」とも、矢部さんは強調した。
ちょうど、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事に関連し、埋め立て用土砂の、海への投入が開始された。賛否の論議が高まっている。
日米関係について、根本から考え直す時期に来ていることを実感させる会見だった。
ゲスト / Guest
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矢部宏治 / Koji Yabe
ノンフィクション作家、書籍情報社代表 / writer
研究テーマ:知ってはいけない2