2019年02月05日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「2019年経済見通し」④労働市場:武田洋子・三菱総合研究所政策・経済研究センター長

会見メモ

変化する労働市場に対して中長期的に企業と労働者に求められる対応を解説した。根本的な問題はAIに仕事を奪われることではなく、技術の進展による労働需給の変容に合わせて、働く人が学び直すことのできる環境や社会保障制度を整えることだと指摘した。

 

司会 藤井彰夫 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

AI台頭で「職のミスマッチ」時代に

藤井彰夫 (日本経済新聞社上級論説委員)

 米中貿易戦争などで世界と日本経済の視界不良が続く。急速に進歩する人工知能(AI)は労働力不足の日本にどんな影響を及ぼすのか。経済見通しシリーズ、ラストバッターの武田さんのお話は、こうした皆が抱く疑問に答えるものだった。

 武田さんは世界経済については、昨年、表面化した新たな潮流として米中の覇権争い、民主主義・資本主義のほころび、データをめぐる争い―の3つをあげた。そのうえで2019年を占ううえでの注目点として真っ先にあげたのが米中対立。

 当面の貿易摩擦については、現状維持と、追加関税など保護主義エスカレートの2つのシナリオをあげ、前者では世界の実質国内総生産(GDP)を0.2%、後者では0.5%押し下げという試算を紹介した。

 短期的な貿易摩擦だけでなく、米中の覇権争いは長期化するとの見通しも示した。経済規模では2030年までに中国が米国を上回り、技術力でも中国が米国に肉薄し、軍事力も米国の絶対優位は崩れる。新興国をめぐる米中と投資競争も激化するという姿を描いた。

 日本経済については戦後最長の景気回復局面になっているが、年後半には世界経済の減速と消費税増税が景気の重しになると指摘した。

 日本の労働市場については、目先は人手不足が深刻になっているが、AIやロボットなどによる自動化が進む2020年代後半以降は「職のミスマッチ」時代を迎えると指摘した。AIなど技術革新で事務職120万人、生産職90万人が過剰になる一方、技術革新を主導する専門職170万人が不足するという推計を紹介した。このミスマッチを解消する職業訓練などの重要性を訴えた。

 最後に武田さんからいただいた記者クラブへのメッセージは禅語の「春色無高下(春の暖かさは地位や立場の上下にかかわらずに訪れる)」。さて世界経済には。


ゲスト / Guest

  • 武田洋子 / Yoko Takeda

    日本 / Japan

    三菱総合研究所政策・経済研究センター長 / Chief Economist, General Manager, Research Center for Policy and Economy, Mitsubishi Research Institute

研究テーマ:2019年経済見通し

研究会回数:4

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