2018年11月02日 11:00 〜 12:00 10階ホール
ジャーナリスト 安田純平氏 会見

会見メモ

内戦下のシリアで拘束され、34カ月ぶりに解放され1025日に帰国したフリージャーナリストの安田純平氏が会見した。

 

司会 川村晃司 日本記者クラブ企画委員(テレビ朝日)


会見リポート

超人的精神力、“闇”見る表情も

 若き仙人のような面構えに、強い精神力を感じた。ジャーナリスト、安田純平さんは40カ月にわたり拘束されながらも、人間が崩れなかった。11月2日の日本記者クラブでの会見で予定時間の倍以上も語り続けたのは、そうせざるを得なかったのだろう。語りの中で一つだけ、あれ? と思うことがあった。シリアへの案内役が「自分は仕事があるので現地で兄がお前を受け入れる」と言い出した点だ。闇の中で彼は別の人間に誘われ「話が違うな」と思いながらもシリアに入り、拘束される。

 「自分でもおかしいと思いながら、歩き続けた」という後段は、戦場などの場合、十分あり得ることだが、気になったのは前段だ。「仕事」を理由に共にリスクを犯さない人間をなぜ安田さんは信用できたのか。

 ①日本人紹介のシリア難民向け小学校で知り合った人のつて②イスラム国に殺害された後藤健二さんの元案内人という理由だった。「一定のリスクがある行動をしていたことで、私は彼を信用しました」と安田さんは語ったが、その相手を果たして知り尽くしていたのだろうか。

 戦場報道で一番大事なのは相棒だ。自分のもう一つの「脳」となり、保護者に近い関係が求められる。そのためには性格の長短、裏表、癖などその人間性を深く知らねばならない。その人の誠実さや善なる心だけでは足りない。相手の弱さを知り、猜疑心を乗り越えた上での親密さが物を言う。「自分は仕事があるので」と言った案内人に、「なんでお前が来ないんだ」と食ってかかる関係が築けていたのか。戦場を描くという物語以前に、自分の命を預ける人間をどこまで理解していたのか。私自身、戦場で相棒に何度も救われてきたため、その点が特に気になった。

 安田さんの精神力は超人的だが、会見中、はっとする場面があった。再び紛争地に? と問われた際、「全く白紙です」と答え、うつむいた暗い表情。そして絶望の話を終えた後の闇を見るような顔だ。人は自ら過酷な記憶を封印するものだが、のちに何度もぶり返すものだ。全く違った分野でもいい。表現し続けることで、回復してほしいと願っている。


毎日新聞社夕刊編集部  藤原 章生

ゲスト / Guest

  • 安田純平 / Jumpei Yasuda

    ジャーナリスト / Journalist

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