2018年10月26日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「サウジアラビア ジャーナリスト殺害事件の影響」保坂修司・日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究理事

会見メモ

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

事件の謎と影響を読み解く

出川 展恒 (NHK解説主幹)

 サウジアラビア政府を厳しく批判していたジャーナリスト、ジャマール・ハーショグジー(カショギ)氏が、10月2日、トルコにあるサウジアラビア総領事館の中で殺害された事件が、世界を震撼させている。トルコのエルドアン大統領が「計画的殺害」と断定し、サウジアラビアの検事総長もやむなく、それを追認した直後の会見。事件の背景や影響について、多角的な分析を聞くことができた。

 とくに、ハーショグジー氏の履歴や政治的立場、事件に関与した疑いが指摘されているムハンマド皇太子とその側近らの人物像の解説は、明快かつ深い内容だった。

 とにかく多くの謎に包まれた事件である。「なぜ、ハーショグジー氏は殺されたのか?」「なぜ、トルコは証拠を公表しないのか?」「サウジアラビアにとっての落としどころは?」「国際政治経済への影響は?」―

 こうした疑問に、保坂氏はいくつかのシナリオを提示しながら、説得力ある解答を導き出して行った。最大の焦点は、「事件が誰の指示で行われたか」である。ムハンマド皇太子自身が命令したのか。側近らが皇太子の意向を忖度したのか。皇太子はいつ犯行を知ったのか。

 保坂氏は、今後、ムハンマド皇太子に何らかの責任が及ぶ状況になった場合には、サルマン国王が皇太子の交代を余儀なくされたり、宮廷クーデターが起きたりする可能性も排除できないと見る。国際的な非難が高まっており、ヨーロッパ諸国やアメリカからは、サウジアラビアへの制裁を求める声も挙がっている。これに対し、サウジアラビア側は、「制裁をかけられれば、対抗措置をとる」と反発している。

 今後の展開次第では、原油価格の高騰を招くなど、日本経済にも影響が出てくる可能性があるだけに、今回の事件がサウジアラビアの内政と国際関係に与える影響を注視してゆく必要があると感じた。


ゲスト / Guest

  • 保坂修司 / Shuji Hosaka

    日本 / Japan

    日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究理事 / Senior Research Fellow, JIME Center, The Institute of Energy Economics, Japan

研究テーマ:サウジアラビア ジャーナリスト殺害事件の影響

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