会見リポート
2018年11月26日
14:00 〜 15:30
10階ホール
「平成とは何だったのか」(13) 平成のボランティア史 渥美公秀・大阪大学教授
会見メモ
司会 瀬口晴義 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)
会見リポート
マニュアルにとらわれ過ぎず、臨機応変に
中川和之 (時事通信社解説委員)
巨大地震の端境期に高度成長を遂げた日本は、平成に入って相次いで大災害に襲われた。そこで登場したのが災害ボランティアだ。この日の会見では、自ら災害救援のNPO理事長も務める渥美公秀大阪大学教授(社会心理学)が、阪神大震災から今年の西日本豪雨までを振り返り、災害時のボランティアセンターが「マニュアルにとらわれ過ぎで、臨機応変も大事」と指摘し、報道でも固定的な見方をしないよう求めた。復興支援では「若者たちの多様な活動が、事細かに地元紙に報道されたことが励みになった」と述べた。
阪神大震災で震度7の揺れが襲った西宮市内に住んでいて、自宅近くの小学校で避難所ボランティアをしたのがきっかけ。「家族も無事だったので、お手伝いに行っていただけ。言われて初めてボランティアだと自覚した」と言う。その後、地元のNPOで継続的に災害救援を行い、学会の設立に関わるなど研究も重ねてきた。
渥美教授は「良かれと思って作られたマニュアルなどが『秩序化のドライブ』を招き、地元社会福祉協議会が作るセンターの活動だけが正しいと考えられ過ぎている」と語る。東日本大震災では「地元のセンターが開設されない初期段階に『まだ行くべきではないですよね』という取材を受け、『行った方がいいに決まっている』と答えた」という。熊本地震では、ボランティアが多く駆けつけセンター受付がたった14分で終わった後、大学生が高齢者の水運びニーズを探して活動を行った事例なども紹介。
自らのNPOでは、大型バスで地元センターを支援するとともに、マイカーで現地入りして個別の支援活動も行っており、「センターは初めての人や個人には助かるが、個別支援とのバランスが大事」と述べた。
「まもなく1月17日で、阪神大震災から24年経つが、災害時の障がい者の問題が解決されていないなど、まだ途上で反省ばかり」という渥美教授。「助ける、助けられるではなく、助かる社会をどう作っていくか。実践と研究を続けていく」と改めて決意を語っていた。
ゲスト / Guest
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渥美公秀 / Tomohide Atsumi
大阪大学教授 / Professor, Osaka University
研究テーマ:平成とは何だったのか
研究会回数:13