2018年10月22日 13:00 〜 14:30 10階ホール
著者と語る『中央銀行: セントラルバンカーの経験した39年』白川方明・前日本銀行総裁

会見メモ

日銀での仕事を振り返り、中央銀行が果たすべき役割について語った。

『中央銀行: セントラルバンカーの経験した39年』

 

司会 福本容子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

物価目標2%は「苦渋の決断」

濱條 元保 (毎日新聞出版エコノミスト編集次長)

 「中央銀行を巡る議論を活発にするための材料として出版した」。5年半の沈黙を破り、39年間の日銀時代の体験をまとめた本の出版を機に90分にわたり熱弁を振るった。

 10年前のリーマン・ブラザーズの破綻を「信じられない思いだった」と振り返る。その前後に苦境に陥った米大手金融機関は米連邦準備制度理事会に救済されたのを踏まえると、「なぜ」という思いが強まった。

 1997年の山一証券の破綻時に日銀特融で金融機関への連鎖を防いだが、公的資金の枠組み作りにもたつき、不良債権処理が遅れた日本。対照的にリーマン破綻というショック療法で、不良債権処理を迅速に進めた米国。だが、危機を世界に拡散させ、実体経済を大きく落ち込ませた。山一の時は「日本発の危機を起こさない」と覚悟を決め、リーマン危機と比べて、実体経済の落ち込みを小さくしたとの自負がある。

 米国は大きなショックで、多くの失業者を出し、それは若年層に集中したことに触れ、「その後の社会の分断、ポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭とは無関係とは思えない」と、金融政策が民主主義の在り方と深く関わっているとみる。

 2012年末、大胆な金融緩和による脱デフレを公約に掲げる自民党の安倍晋三総裁が首相に就くと、2%の物価目標を「できるだけ早期に実現する」という共同声明を結んだ。「(国民が)実験的政策にかけたい気持ちに傾いた場合、中央銀行がどう対応すべきかということだった」。国民の共感や信頼がなければならないとする自身の哲学の前に苦渋の決断だったことを明かす。

 それでも「日本経済が直面する問題の答えは金融政策にはない」「物価が上がらないことが、低成長の原因でもない」と持論を展開。「財政の持続性に向けてしっかりと取り組むのが最大の(金融の)出口戦略」と語った。


ゲスト / Guest

  • 白川方明 / Masaaki Shirakawa

    日本 / Japan

    前日本銀行総裁 / former Governor of the Bank of Japan

研究テーマ:中央銀行: セントラルバンカーの経験した39年

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