2018年10月19日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「世論調査と報道」(2) 地方における世論調査 河村和徳・東北大学大学院准教授

会見メモ

被災地などでの世論調査の例から、地方での世論調査で見えてくること、調査の意義や課題などを解説した。

河村氏HP

東北大学教員紹介ページ

 

司会 山田惠資 日本記者クラブ企画委員(時事通信)


会見リポート

「地方メディアと研究者、もっと協力を」

宗像 信如 (下野新聞社東京支社報道部長)

 地方紙にとって、金も人手もかかる世論調査は正直、少々荷が重い。激戦が予想される重要な首長選に絞らざるを得ないという社もあろう。「それでいいのか」と河村氏は問いかける。自身も金沢大-東北大と一貫して地方の大学に身を置き、数字でデータ化した地方の実情を発信してきた。気になったのは、研究者が求める学術調査とメディアが求める世論調査の最大公約数をどう求めるかである。これも両者がタイアップを重ねることで、歩み寄れると感じた。

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 報道における世論調査は①国民の政治争点に対する意見分布や政党支持の状況を知る②選挙結果の予測及び分析に使う-に大別される。②の場合は「どちらが勝つかに関心がシフトする」と河村氏は指摘。その結果「無風の知事選では世論調査をしないこともある」と嘆く。「県政、市町村政レベルの世論データが、誰にも手にも入らなくなっていいのか」という問題提起である。

 実は、河村氏自身も地方で世論調査をする意味に疑問を持っていたことがあるそうだ。その必要性に確信を持つようになったのは東日本大震災以降だった。

 仙台市近郊で2012年に調査した、有権者から見た民主党と自民党の評価は「評価しない」が民主党は32.1%だったのに対し、自民党は41.5%だった。自民党は政権復帰後、「震災対応を民主党に任せていては駄目だから有権者は自民党を選んだ」と喧伝したが、少なくとも仙台近郊でこのロジックは成立しないことになる。データが通説を否定した例である。

 地方メディアと研究者のタイアップの重要性も説いた。研究者にとってメディアとの接触は、自己の解釈の妥当性を確認できる場、情報交換できる場である一方、メディアにとっては調査会社に投げるよりも安上がりでできることもある。なにより調査結果(研究成果)がメディアを通して発信されることで回収率が上がるようになるともいう。結果を社会に還元してこその世論調査であり学術調査。秩序なき、社会還元なき学術調査は「調査公害」になりかねないことも指摘した。


ゲスト / Guest

  • 河村和徳 / Kazunori Kawamura

    日本 / Japan

    東北大学大学院准教授 / associate professor, Tohoku University graduate school

研究テーマ:世論調査と報道

研究会回数:2

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