2018年08月03日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「西日本豪雨の特徴と防災・減災機能の強化」

会見メモ

写真左=清水慎吾・水・土砂防災研究部門主任研究員 右=岩波越・レジリエント防災・減災研究推進センター研究統括

 

国立研究開発法人防災科学技術研究所

 

司会 上田俊英 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

大雨の特徴と予測の新技術説明

澤本 梓 (読売新聞東京本社科学部)

 死者220人、行方不明者10人(8月7日現在、総務省消防庁調べ)と、平成最悪の豪雨災害となった西日本豪雨。会見では防災科学技術研究所(茨城県つくば市)の研究者2人が、今回の豪雨の特徴と、新たな豪雨予測の実証実験について説明した。

 清水慎吾氏(写真・左)は豪雨の特徴を3点挙げた。一つは西日本の広い範囲で24時間雨量が過去最多を記録したこと。その中で、局所的に強い雨が降る場所があったこと。さらに、同じ雨量でも被害の大小が地域によって異なったこと――である。また、線状降水帯に、暖かく湿った空気が供給されて積乱雲が次々と生まれる「バックビルディング現象」が起き、強い雨が長く降り続いたというメカニズムも解説した。

 続いて、地域による被害の違いを説明するため、過去30年間の雨量を使った統計解析の結果を報告。24時間雨量が200㍉で、大きな浸水被害が出た岡山県倉敷市真備町と、同300㍉の高知県安芸郡を比べた。その結果、真備町では今回の雨は「100年に一度の大雨」という頻度であるが、安芸郡では「3、4年に一度の大雨」に過ぎなかった。つまり、大雨の「まれさ」が被害の大小と関連づけられ、清水氏は「地域にとって、この雨がどのくらい危険なのかということを、もっと見える形で示すことが今後重要になる」と述べた。

 岩波越氏は、同研究所が7月、「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダー」という新型レーダーを用いて、30分先のゲリラ豪雨を予測する実証実験を始めたことを説明。2020年の東京五輪でも使える技術であるとした。

 数々の災害を経験し、科学的な気象予測技術が進んだ今日にあって、これだけの甚大な犠牲が出た現実に、無力さを感じている記者は多いだろう。専門家による被害予測や分析と避難行動をつなぐために、我々は何をするべきなのか、再考する必要があると感じた。


ゲスト / Guest

  • 清水慎吾 / Shingo Shimizu

    国立研究開発法人防災科学技術研究所 / National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience

    水・土砂防災研究部門主任研究員

  • 岩波越 / Koyuru Iwanami

    国立研究開発法人防災科学技術研究所 / National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience

    レジリエント防災・減災研究推進センター研究統括

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