2018年09月28日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「世論調査と報道」(1)  松本正生・埼玉大学社会調査研究センター長

会見メモ

「世論調査の意義はサイレントマジョリティの把握。メディアの調査以上に世論をとらえているものはない」と評価しつつ、「従来のRDD方式は限界」としてスマホを使った手法などを紹介し調査方法の開発を促した。「世論が均質化している」と社会の変質も指摘。

埼玉大学社会調査研究センター

 

司会 山田惠資 日本記者クラブ企画委員(時事通信)


会見リポート

世論調査は“ポストRDD”が課題

泉 宏 (時事通信出身)

 近年、政治と世論調査の関わりが一段と強まる中、その分野の研究では第1人者の松本氏が、政治に関する世論調査の現状と今後の問題点について解説した。松本氏は国政選挙での各メディアの情勢調査などで使われているRDD方式について、スマホ普及の急拡大などから「すでに限界にきており、メディアの世論調査では“ポストRDD”が最大の課題だ」と指摘した。

 松本氏の会見は「世論調査と報道」という企画の第1弾。同氏は長年にわたり国政選挙の結果と関連調査データを分析し、自らもフィールドワークとして様々な世論調査を実施してきた。同氏が「限界」としたRDD方式とは、コンピューターで無作為に組み合わせた数字による電話調査で、2000年前後から各メデイアが常用している。

 ただ、若い世代を中心とした携帯電話(スマホ)の急速な普及で、ここ数年は対象電話を固定と携帯に広げたRDD併用方式が主流となっている。この流れも踏まえて松本氏は、最大の目的の「サイレントマジョリティーの抽出」のためにも、今後はスマホでのSM(ショートメール)なども活用した調査方式に移行しないと「社会の代表制と反映性を掌握できない」と指摘した。

 

◇マスコミ世論調査は社会資産

 松本氏は各メディアの定期的世論調査を「代替できない社会資本」と評価した。同氏は毎月、主要メディアの調査での内閣支持率の平均値を算出、公表しているが「これが最も客観的な指標だ」と力説。その一方で各社が調査での独自性を競い合う現状については「調査側の自意識過剰」とし、調査費用の負担軽減のためにも、各社共同調査への移行も検討すべきだと強調した。


ゲスト / Guest

  • 松本正生 / Masao Matsumoto

    日本 / Japan

    埼玉大学社会調査研究センター長 / Professor, Social Survey Research Center, Saitama University

研究テーマ:世論調査と報道

研究会回数:1

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