2018年06月06日 13:00 〜 14:00 10階ホール
清田明宏・国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)保健局長 会見

会見メモ

清田明宏氏は、パレスチナ難民による大規模デモの直後の5月17日にガザを訪問、21日まで滞在した。ガザでは、デモ以前から医薬品が枯渇するなど事態が悪化していたが、銃撃による重症患者を含む多数の負傷者が発生し、医療の提供が崩壊の危機にあると報告した。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

 

UNRWAサイト(英語)

国連広報センターUNRWA紹介ページ


会見リポート

「崩壊寸前」の医療 抗議デモ続くガザ

日出間 翔平 (共同通信社外信部)

 3月末に始まった反イスラエルデモで、パレスチナ自治区ガザでは1万人以上が死傷した。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の保健局長を務める清田明宏さんの報告には、多くの死傷者が出ている現場の痛みと、先行きが見通せない将来への憂いがにじんでいた。

 清田さんは、イスラエル軍の銃撃などで60人以上が死亡した5月14~15日の直後にガザに入った。病院は患者であふれ、医薬品は枯渇。手術を待つ間に失われていく命もあった。デモがある毎週金曜日に新たな患者が増えるため、治療の途中でも木曜日に退院させざるを得ない。

 「医療現場は崩壊寸前だ」。短い言葉から、その切迫感が伝わる。UNRWAは援助国の寄付を受け、約530万人と言われるパレスチナ難民に医療や教育を提供している国連機関。だが、最大拠出国だった米国のトランプ大統領は今年1月、支払いの大半を凍結し、予備の医薬品を購入できなくなるなどの影響が出ているという。

 1950年に発足したUNRWAの活動期限は3年の予定だったが、パレスチナ難民問題に収束の兆しはなく、延長され続けてきた。清田さんは「UNRWAが今まで残っていることが、国際社会がこの問題を解決できなかった一番の証拠だ」と訴えた。

 6月1日のデモでは、白衣を着て負傷者の救護に当たっていた21歳の女性看護師が銃撃を受けて亡くなった。「医療は男性だけの仕事ではない」。彼女は生前、米紙のインタビューに保守的なパレスチナ社会で女性が活躍する志を語っていた。「100人以上の死者、1万3千人以上の負傷者」という数につい圧倒されてしまうが、その向こうにある犠牲者たちの人生を思う。


ゲスト / Guest

  • 清田明宏 / Akihiro Seita

    国連パレスチナ難民救済事業機関 / UNRWA (United Nations Relief and Works Agency for Palestine Refugees in the Near East)

    保健局長 / Director of Health Programme

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