2018年07月03日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「平成とは何だったのか」(7) 田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長

会見メモ

「外交は国益のために結果をつくること。<国内益>に目を向けている現状は外交ではない。中韓などに対し国内で強硬な主張をすることが政権基盤を固めるうえで役立つようになってしまった。これはポピュリズム」と現政権の外交戦略に疑問を呈した。

「今は危機であり、最大のチャンス。フェイズを変えることができる」として、米朝会談を受け、平壌に拉致被害者調査のための政府連絡事務所を開設すべきだとした。

  

司会 倉重篤郎 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

YouTube会見動画

会見詳録


会見リポート

「国益より国内益重視」  日本外交に手厳しい批判

出石 直 (NHK解説委員室解説主幹)

 当クラブでの10回目の会見。冒頭「これが最後だと思うので思いの丈を申し上げたい」と切り出し、冷戦終結後の国際情勢の変化と日本外交のあり方について熱弁を振るった。

 湾岸戦争で130億ドルを拠出しながら国際社会から評価を得ることができなかった屈辱。朝鮮半島第一次核危機による脅威の増大。冷戦終結後の国際情勢の大きな変化を受けて、当時の外務省は、法整備による安全保障能力の向上と、外交力による安全保障環境の改善に尽力したという。

 「日米安保共同宣言、日米防衛協力のためのガイドラインの改訂、小泉総理の訪朝も、アメリカ任せにしない能動的な外交だった」と振り返る。

 ところが「2000年代の半ば以降、こうした外交努力が途絶えてしまった。外交とは国益にかなう結果を出すことなのに、今の日本は国内益しか考えていない」と今の日本外交に強い疑問を呈する。

 かつて外交官として深く関与した朝鮮半島情勢については、圧力(Pressure)、米中韓との連携(Coordination)、危機管理計画(Contingency Planning)、北朝鮮との連絡チャンネル(Communication Channel)の「P3C」が必要だとしたうえで「核問題が進展すれば拉致問題が解決する局面も出てくる。今こそ国益にかなう結果を出す戦略的な外交を展開すべきだ」と訴えた。

 日本外交の現状に対する手厳しい批判は、人事を官邸に握られて主体的な外交を展開できない後輩たちへのエールと受け止めた。かつて安倍総理のFacebookに「田中に外交を語る資格はない」と書き込まれたことがあったそうだが「呼んでもらえる限り来続けます」と当クラブへの再登場を約束してくれた。


ゲスト / Guest

  • 田中均 / Hitoshi Tanaka

    日本 / Japan

    日本総研国際戦略研究所理事長 / Chairman, Institute for International Strategy, The Japan Research Institute, Limited

研究テーマ:平成とは何だったのか

研究会回数:7

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