2018年05月08日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「国民投票法の成り立ち、その課題と展望」南部義典・国民投票広報機構代表

会見メモ

「実際に憲法改正の国民投票がいま行われたならどうなるか」という視点から、公選法との整合性や資金、広告を含めた国民投票運動の規制など現行法の問題点を指摘した。

 

『超早わかり 国民投票法入門』

『広告が憲法を殺す日』

 

司会 川上高志 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

課題山積の改憲ルール作り

津山 昭英 (朝日新聞出身)

 憲法を改正するには、国民投票で「過半数の賛成」を得なければならない。国民投票法はすでにある。改憲手続き研究の草分け的存在である南部氏の話で分かったのは、具体的には、何も決まっていないということだ。司会者の言葉を借りれば、イメージが湧いてこないのである。

 国民投票法は選挙運動とは逆で、「国民が自由な立場で運動できる」が原則だ。例えば、選挙では禁止されている戸別訪問で改憲に賛成・反対を訴えることもできる。上司が部下に酒をおごって賛否を誘導することもできる。南部氏は、八つの課題を挙げた。開票立会人の日当など、すぐにも解決できるものもある。だが、難しい課題が多い。その一つが、運動経費である。

 個人や団体が、テレビにCMを流すなど、投票運動にどれだけ資金を出そうと構わないし、収支報告する義務もない。これでは資金力に勝る方が有利になり、「有権者の意志が歪められてしまう」と南部氏は懸念し、「CMを全面禁止し、費用に上限を設け、収支報告を義務付けるべきだ」と提言する。

 では、フェイクが飛び交うインターネットはどうするのか。この質問には「公的、民間の議論はあるが、オンブズマンが立ち上がればいい」という答えが返ってきた。「過半数」の課題では、絶対得票率を提唱する。

 何度も「改憲を政局化してはならない」「与党会派と野党第一会派の二人三脚で課題に取り組んでほしい」と訴え、投票法制定に尽力した中山太郎氏の言葉を引用した。

 「私たちが目指したのは何よりも『中立・公正なルール』を作ることです。特定の政党、特定の勢力に有利なルールを作ってしまえば、国家百年の大計を誤ることになります」

 「政局抜きで議論できる環境を整える」ことの重要さを言いながらも、「なかなか難しい」とも。目指すべき国民投票までの道のりは遠い、というのが、話を聞いての実感だった。


ゲスト / Guest

  • 南部義典 / Yoshinori Nambu

    日本

    国民投票広報機構代表

研究テーマ:国民投票法の成り立ち、その課題と展望

ページのTOPへ