会見リポート
2018年03月23日
13:00 〜 14:30
10階ホール
「朝鮮半島の今を知る」(3) 古川勝久 国連北朝鮮制裁委専門家パネル元委員
会見メモ
「北朝鮮へは、より強い制裁を科すのではなく、現在の制裁をしっかり実行することが大切」。制裁の網をかいくぐって物資が流通している実態を、具体例を挙げて詳細に解説した。
司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)
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会見リポート
米朝首脳会談、実現に疑問
宋 光祐 (朝日新聞社GLOBE編集部)
初の米朝首脳会談で、朝鮮半島情勢は非核化や平和の実現に向けて大きく動くのか――。誰もが半信半疑でいるこの問いに対する、古川勝久氏の答えは明快だった。「現実的に米朝会談が行われる可能性は非常に低いのでは」
2016年4月まで国連北朝鮮制裁委員会で委員を務めた専門家。厳しい見方をする理由として、米朝双方の問題を指摘する。まず、北朝鮮は対話ムードになっても核開発をやめていない。「核ミサイルを増やす分は交渉の土台になっても、開発はやめない。北朝鮮は一貫している」
一方、米国側には交渉の責任者がいない。北朝鮮との交渉窓口を担ってきた国務省のジョセフ・ユン北朝鮮政策特別代表は3月2日に辞任。最前線で北朝鮮政策を担う駐韓大使も空席のままだ。レックス・ティラーソン氏の後任として国務長官に就くマイク・ポンペオ氏と、ハーバード・マクマスター大統領補佐官の後任になるジョン・ボルトン元国連大使についても、古川氏は「要求を突きつけるだけで交渉はしない人たち」と評し、交渉が成立しないと予想する。
米朝会談がポジティブな方向に進まないとしたら、国際社会が今やるべきことは何か。こちらの答えは簡単には出そうにない。「我々が思うほど北朝鮮は孤立していない。圧力だけで核を断念した国はない」
国連専門家パネルが3月に発表した統計によると、現時点では北朝鮮が経済的な打撃を受けているとは言い難いという。為替レートやガソリンなどの価格は安定し、貿易による外貨収入は昨年1~9月に最低でも2億ドルに上った。ここ数年で、従来と異なる北朝鮮の密輸ネットワークが日本や中国に現れているという。「核ミサイルにちなむカネやモノが北朝鮮に流れるのを防ぐために、すでにある制裁をしっかりしないといけない」。古川氏の話を聞くうちに、疑問が浮かんだ。日本が自力でできることはあるのだろうかと。
ゲスト / Guest
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古川勝久 / Katsuhisa Furukawa
国連安全保障理事会・北朝鮮制裁委員会専門家パネル元委員 / former member of Panel of Experts established pursuant to resolution 1874, UN Security Council
研究テーマ:朝鮮半島の今を知る
研究会回数:3