2018年03月13日 15:30 〜 17:00 10階ホール
「働き方改革の論点」(1)裁量労働を問う 北岡大介 元労働基準監督官(社会保険労務士)

会見メモ


会見リポート

裁量労働の悪用 情報公開でチェックを

竹田 忠 (企画委員 NHK解説委員)

 今や国を挙げての取り組みになったといって過言ではない働き方改革。その行方を大きく左右する「働き方法案」を中心に、改革の論点を深堀りするシリーズ第1回。

 法案の大きな柱で、提出前から激論となったのが裁量労働の適用拡大問題。裁量労働は実際に働いた時間ではなく、あらかじめ労使で決めた「みなし時間」に基づいて賃金を払う制度。自分の都合に応じて働ける一方、野党などからは〝定額働かせ放題〟としての批判も。

 結局、議論のもとになる労働時間のデータや比較がずさんだったため、大モメの末に適用拡大は法案から削除されることに。しかし、裁量労働そのものはすでに多くの企業で導入されていて、乱用されたり、運用がいい加減だったりという実態が国会論戦でも次々と明らかに。問われているのは制度の拡大よりも、今ある制度をどうするか。

 元労働基準監督官の北岡氏は、もともとの法案要綱には、現行制度の運用を是正するための措置、たとえば仕事の開始・終了時間は本人が判断することや、必要な健康確保策の例示、などが盛り込まれていたのに、こうした重要な明文規定まで政府は先送りしようとしているとして警鐘を鳴らす。そしてより本質的な問題としては労働組合がチェック機能を果たせていないことにあると指摘。

 では、どうすればいいのか。組合がダメなら、社会にチェックしてもらってはどうか。

 北岡氏はウェブサイトなどでの情報公開を提唱する。裁量労働を導入している企業には基本データをネット上などで公開することを法律で義務付ける。そうすれば関係者からその情報は正しくない、などの反論が上げやすくなるだろうというもの(会見動画では1時間12分と同19分前後の2カ所で言及)。現場の実態を踏まえた上での問題提起と本質論のスリリングな90分。


ゲスト / Guest

  • 北岡大介 / Daisuke Kitaoka

    日本 / Japan

    社会保険労務士(元労働基準監督官) / Social insurance labor consultant

研究テーマ:働き方改革の論点

研究会回数:1

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