2018年04月13日 10:30 〜 11:30 10階ホール
グリアOECD事務総長 会見

会見メモ

経済協力開発機構(OECD)のアンヘル・グリア事務総長が会見し、少子高齢化社会での経済成長を促す対日提言を発表した。

 

OECD東京センター

 

左はランダル・ジョーンズ日本・韓国担当課長

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 長井鞠子/大野理恵

 


会見リポート

高齢化社会、女性の活用を 消費税19%が必要水準

坂本 幸信 (読売新聞社経済部)

 グリア氏の会見は、日本記者クラブの春の風物詩だ。「また東京に戻って来られて、非常にうれしい。毎年の日本訪問は、OECDと世界経済における日本の重要性を反映している」。冒頭こそ温和な雰囲気でスタートしたものの、日本経済の課題に鋭く斬り込んだ。

 今回は、「高齢化社会における包摂的な成長の促進」と題した対日政策提言書を携えての来日だった。

 提言書によれば、日本は2015年時点で、生産年齢人口に占める高齢者の割合が44%となり、OECD加盟国中最も高い。50年には73%に達する。危機的な水準だ。グリア氏は「この問題をカバーするには、労働市場で埋もれた才能をもっと活用するしかない」と力を込めた。

 埋もれた才能とは何か――。

 それは、女性だ。提言書によると、日本の女性の平均賃金は男性を25%下回っており、格差はOECD加盟国中3番目に大きい。管理職の割合は、男性に劣らない高等教育を受けながら、わずか12%。OECD中2番目に低い。グリア氏は「労働市場への女性の参加が明らかに欠けている。仕事の中身や質で、昔ながらの性差によるギャップがある」と断じた。

 停滞する財政再建に釘を刺すことも忘れなかった。高齢化に伴って、年金や医療保険といった社会保障費が増大の一途をたどっているからだ。日本の公的債務残高は、GDP比で約220%。世界でも類を見ない。

 グリア氏は会見後、提言書を届けるために麻生財務相のもとへ向かった。財政再建に向けて「消費増税を行うべきだ」と訴え、麻生氏は「努力する」と応じた。

 だが、グリア氏が提言書に盛り込んだ財政再建のために将来的に必要な消費税の水準は「19%近く」という。森友学園問題などに揺れ、来年予定される10%への増税も危ぶまれる政府にとって、あまりに厳しい春の便りだったに違いない。


ゲスト / Guest

  • アンヘル・グリア / José Angel Gurria

    OECD / OECD

    事務総長 / Secretary-General

  • ランダル・ジョーンズ / Randall Jones

    OECD / OECD

    経済総局 シニアエコノミスト 日本・韓国担当課長 / Senior Economist for Japan and Korea, Economics Department

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