2018年03月20日 10:00 〜 12:00 10階ホール
「2期目の習体制」(4)周強武 中国財政部国際財経センター主任

会見メモ

周強武氏を団長とする経済学者団が習近平政権の経済政策と中国経済の現状について話した。

「40年で1人当たりGDPがほぼ最下位から世界2位の経済大国に」(周氏)「トランプの一国主義はWTOルールに反している」(李氏)「仮想通貨技術の発展に注目」(白氏)「原発は中国内でも意見が分かれる。再エネを伸ばしたいが課題も」(劉氏)。

左から周強武、劉世錦、李剛白重恩の各氏

 

司会 坂東賢治 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

通訳 阿部将顕/伊藤鴻

 


会見リポート

中国経済を知る貴重な機会

吉田 健一 (読売新聞社国際部)

 20日に行われた中国人エコノミスト4人との会合は時宜を得たものとなった。2期目の習近平政権の経済政策を担う閣僚や中国人民銀行(中央銀行)総裁らがこの会合前日に全国人民代表大会で選出されたばかりで、今後の中国の経済政策に日本でも関心が高まっていたからである。

 特に興味を引かれたのは、周強武・中国財政部国際財経センター主任が語った、習国家主席肝いりの巨大経済圏構想「一帯一路」の進展状況だ。

 周氏は、一帯一路に関係する7つの沿線国で人民元決済が可能となったことや、沿線国との貿易が昨年、1.1兆ドルに達したことなど、一帯一路のこれまでの成果を具体的な数字やプロジェクトを挙げて紹介し、大変参考になった。

 中国が一帯一路沿線国の学生に奨学金を出し、中国留学を奨励しているという話には改めて考えさせられた。国際社会で「親中派」を育成し、中国の国際的影響力を拡大する中・長期的戦略の一環だ。日本としても大いに参考にするべきだろう。

 周氏は「国際社会で一帯一路への協力の機運が高まっている」と自信に満ちた表情で言い切った。ただ昨年、中国・ラオス高速鉄道建設現場やカンボジアの港湾建設現場といった一帯一路プロジェクトを見て回った経験から言えば、中国の存在感が増すにつれて住民の間で嫌中感情が強まるなど、決して「歓迎一色」というわけではなかった。周氏の言葉には違和感を抱いた部分もあった。

 このほか、劉世錦・中国発展研究基金副理事長は、「年6.3%程度」の経済成長で、習氏が掲げる「2021年までの小康社会の建設」が実現するとの見通しを提示。李剛・中国商務部国際貿易経済研究院副院長は「対外開放を継続し、(高速成長ではなく)『質の高い成長』を追求する」との習政権の大方針を説明した。白重恩・清華大経済管理学院副院長は、習政権が重視する「金融リスクの防止」について分かりやすく語った。

 質疑応答も含め、4人のエコノミストは総じて率直に意見を述べたように思う。来年もこのような貴重な機会があることを期待したい。


ゲスト / Guest

  • 周強武 / ZHOU Qiangwu

    中国 / China

    中国財政部国際財経センター主任

  • 劉世錦 / LIU Shijin

    中国 / China

    中国発展研究基金副理事長

  • 李剛 / LI Gang

    中国 / China

    中国商務部国際貿易経済協力研究院副院長

  • 白重恩 / BAI Chongen

    中国 / China

    清華大学経済管理学院副院長

研究テーマ:2期目の習体制

研究会回数:4

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