2018年02月13日 11:00 〜 12:00 会見場
グリムソン 北極サークル議長 会見

会見メモ

「北極サークル」は、グリムソン氏が大統領時代に「北極版ダボス会議」をめざして設立した組織。北極圏は近年、温暖化の影響で海氷がとけ北極海航路が利用拡大している。「天然資源に富む北極圏開発はこの10年で驚異的に進展し、中国、ロシア、韓国は積極的に関与している。日本もぜひ参加してほしい」と呼びかけた。

 

北極サークル英文HP 

 

司会 脇祐三 前日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)

通訳 池田薫


会見リポート

警戒よりも積極関与を

大木俊治 (毎日新聞論説委員)

 中国は今年1月に初めて発表した北極政策に関する白書で、北極圏を巨大経済圏構想「一帯一路」の一環と位置づけて積極的に関与していく方針を打ち出した。日本では、世界覇権を目指す中国の「野望」を警戒する声も聞かれる。

 だがグリムソン氏は、中国の「野心的な計画」は「世界で軍事的脅威を呼び起こしていない」として、むしろ積極的な姿勢を歓迎した。韓国の海運会社も、ロシアが北極圏で開発中の液化天然ガス(LNG)のアジアへの輸送をにらんで大型タンカーの建設を進めているという。

 今回の訪日には、中国や韓国に比べて出遅れ感のある日本の関心を高める狙いがあったようだ。アイスランドで毎年10月に開いている「北極サークル」総会の今年の基調講演を日本の外相に依頼したという。北極圏の国だけで構成する「北極評議会」と違い、域外国も含めて毎年60カ国以上の政府関係者や民間の専門家が集まり、オープンな議論を重ねている。日本は大いに活用すべきだろう。

 米露対立による北極圏での軍事的緊張の高まりへの懸念には「この30~40年、北極圏の軍事インフラは多くが閉鎖されたか移動した」「米露は世界各地で対立しているが北極圏では協力が建設的に進んでいる」と一蹴した。

 ロシアが北極海航路の既得権益を独占しているのではという質問にも、むしろ他国に先駆けて北極海航路に関する法律を制定したロシアの動きを評価した。日中韓や欧州連合(EU)と北極圏の国々が新たな漁業・海運協力協定の締結に向け、手続きを進めていることも明かした。

 北極圏を巡る国際的な取り組みは想像以上にダイナミックに動いているようだ。日本は過度に中露の動きを警戒するのではなく、むしろ日本こそが今以上に北極圏への関心を持ち、積極的に関わっていくべきだという意見は傾聴に値する。


ゲスト / Guest

  • オラフル・ラグナル・グリムソン / Ólafur Ragnar Grímsson

    アイスランド / Iceland

    北極サークル議長 (前アイスランド大統領) / Chairman, Arctic Circle (former Icelandic President)

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