2018年06月19日 15:00 〜 17:00 9階会見場
フランシス・フクヤマ氏 会見

会見メモ

翻訳書『政治の衰退 上』の発売日に会見した。

米社会の亀裂の激化、トランプ米大統領の自国第一主義的な政策、世界各地での反移民や大衆迎合主義の勢いなどが増し、民主主義が危機に直面していると説いた。

このような時だからこそ、自由な国際秩序を守るために、知識人が声を上げていく必要があると強調した。

 

『政治の衰退 上』

 

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司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

通訳 大野理恵


会見リポート

トランプ後は穏健大統領か

 米国の民主主義は壊れてしまったのか。そんな疑問を問いかけるのに最適の人が来日した。

 答えは分かりやすかった。トランプ氏が大統領になったのは、政治が国民の抱える不満に反応し問題を解決できなかったからだ。既得権益を持つ団体や勢力が、政治が本来持つ課題解決能力をがんじがらめに縛り上げ、行動不能に陥らせた。

 しかし、だからと言ってトランプ氏が代表する、怒りと対立をあおり、人権や国際ルールを守らない政治が、米国の「公式の」政策になったわけではない、と力説した。トランプ氏に反対して立ち上がっている市民はたくさんいるし、議会や司法、メディアなど他の権力が過激なホワイトハウスを制している。

 フクヤマ氏が属する大学など知的階層の間でも、これまで圧力団体を恐れて手が付けられなかった性や人種をめぐる本質的な議論が始まったという。こうした全米の動きを見ると、米国はトランプ氏の後には国際主義で穏健な大統領を誕生させるだろう、と予想している。

 一方で、米欧の政治の停滞を尻目に、中国やロシアなど強権国家に勢いがある。議論を経ないトップダウンの政策遂行は迅速に難問を解決する印象を与える。しかし「自由がなく国民を弾圧し徹底的に監視する中国のシステムが長続きするわけがない。まして世界の他の地域で根付くわけがない」。

 この人はかつて、自由民主主義への信念から新保守主義者(ネオコン)の一人として目された。力を込めて中国を批判する様子や、何度も語った「ファイトバック(反撃)の時だ」との言葉からは、ネオコン時代の片鱗がうかがえる。

 それにしても世界的なベストセラー『歴史の終わり』を書いてから四半世紀。「なぜあなたは間違ったのか」との辛らつな質問も飛んだ。「その後、考えが変化し研究を深めた。その成果が今回の本だ」と言って、講談社から日本語訳が刊行されたばかりの『政治の衰退(上)』を紹介した。


企画委員 共同通信社特別編集委員  杉田 弘毅

ゲスト / Guest

  • フランシス・フクヤマ / Francis Fukuyama

    米国 / USA

    スタンフォード大学フリーマン・スポグリ国際研究所上級研究員 / Senior Fellow at the Freeman Spogli Institute for International Studies, Stanford University

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