2018年01月31日 15:00 〜 16:00 10階ホール
ナビル・シャアス パレスチナ特使 会見

会見メモ

「アラファト議長に同行して、このクラブに来たことがある」と切り出した。「2国家アプローチはまだ有効だが、米国主導の中東和平プロセスは破綻した。これからは多極的な交渉の場が必要となる。日本もそこで重要な役割を果たしてほしい」

 

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 宇尾真理子 


会見リポート

日本の政治的役割に期待

平田 篤央 (朝日新聞社論説委員)

 露骨なまでにイスラエル寄りの姿勢をみせるトランプ政権の誕生で苦境に立たされるなか、会見で繰り返し強調したのは「米国一極の世界は終わった」という認識だった。

 1991年のソ連崩壊後、いったんは米国一極の世界が生まれたが、イラク戦争の失敗などもあって米国の影響力は低下した。いまや世界は多極化しているのだ、と。

 米国主導の中東和平プロセスは破綻したと断定する。1993年のオスロ合意で生まれるはずだったパレスチナ国家は実現していない。ヨルダン川西岸の62%は占領下にあり、イスラエルの入植者は60万人に上る。パレスチナ側が使える水資源は全体の7%に過ぎない。西岸とガザ、エルサレムは切り離されたままだ。とどめを刺すかのように、トランプ政権はエルサレムをイスラエルの「首都」と認定した。

 暗礁に乗り上げた和平プロセスを救い出すためには、米国頼みでない国際的、多極的な枠組みをつくることが必要だ。来日したのは、日本にもその一翼を担ってほしいと要請するためだという。

 初めて日本を訪れたのは1980年代前半。1982年のイスラエルによるレバノン侵攻で、パレスチナ解放機構(PLO)がベイルートを追われ、本部をチュニスに移したあとのことだ。米国で経済を学んだが、別のモデルを求めて戦後日本の経済復興に関心を抱いたのだという。

 「今回も同じように厳しい状況で、日本が何かしてくれるのではないか、という気持ちを持っているのです」。

 エルサレムの「首都」認定では、米国と一線を画し、「あくまで当事者間の交渉で決めるべきだ」との立場を維持している。国連安保理、国連総会でも「首都」認定の撤回に賛成した。

 こうした日本の姿勢を評価し、これまでのような経済的な支援だけでなく、政治的にも重要な役割を果たせるはずだと期待を表明した。1988年にパレスチナが行った独立宣言について「すでに138カ国が国家として承認している」と述べ、「日本もそろそろ承認を」と求めた。


ゲスト / Guest

  • ナビル・シャアス / Nabil Sha'ath

    パレスチナ / Palestina

    特使 / Special Envoy of Palestinian National Authority

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