2018年02月09日 13:15 〜 14:45 10階ホール
「トランプ政権1年の評価」(2) 安井 明彦 みずほ総合研究所欧米調査部長

会見メモ

「高い株価はトランプにとって最大のプライド。保護主義政策が株価を下げれば(保護主義見直しを)考慮するだろう」「トランプはブラックホールのような存在。近づき過ぎると吸い込まれ周りが見えなくなる」と現政権の「向こう側」に注視すべきと指摘した。

 

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信社)


会見リポート

「期待と不安」が交錯

本間麻衣 (共同通信社経済部)

 発足して1年がたった米国のトランプ政権を、安井明彦氏が分析した。ニューヨーク株式市場が急落し、米国発で世界的な株安連鎖が広がった中での会見となった。

 秋には中間選挙も控え、安井氏は「本当に経済に影響が出てくるのは今年からではないか」と指摘する。米国の利益を最優先にさせる「米国第一主義」には、自国を強くし経済を強化する側面と、通商の保護主義的な政策でも示されるように「周りに壁を立てる閉鎖的」な部分の二面性があるとして、どちらが強く出るかが分からないことから「期待と不安」が交錯していたのではないかと分析した。

 就任1年目で、米国とカナダ、メキシコによる北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉など取り組み始めたものがあるものの、結果につながったものは少なかったと評価した。背景には、議会では共和党が多数だが、上院と下院とでは状況が違うため温度差が生じて議会運営を難しくしてしまい「力を十分に生かし切れなかった」ことや、人事の遅れなどを挙げた。一方、経済にはプラスの影響が見込めるものとして、法人税率の大幅な引き下げを柱とする税制改革やインフラ投資などがあるという。

 2年目の柱として、特に通商政策ではNAFTAの再交渉に関し、企業にとっては脱退も懸念されるが、交渉の長期化も「決断のしようがないため困る」と指摘。株価が高く維持されることがトランプ氏にとっての「最大のプライドだ」と述べ、保護主義的な政策を進めることで株価が下落する場合は、歯止めになる可能性もあるとした。

 最後に安井氏は、トランプ大統領について「ブラックホールみたいなもので、近くにいくと吸い込まれてしまい、周りや向こうにあるものが見えなくなる」と表現し、トランプ政権の「向こう側」を見る姿勢が必要だと強調した。


ゲスト / Guest

  • 安井明彦 / Yasui Akihiko

    日本 / Japan

    みずほ総合研究所欧米調査部長 / Head, Research Department-Europe and the Americas, Mizuho Research Institute Ltd.

研究テーマ:トランプ政権1年の評価

研究会回数:2

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