2018年01月16日 16:00 〜 17:00 9階会見場
ベアトリス・フィン 「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN〈アイキャン〉)事務局長 会見

会見メモ

フィン事務局長は、長崎大学の招待を受け来日。長崎、広島を経て、前日上京した。「(核兵器に関し)、被爆地と日本政府の価値観に大きな乖離がある」と述べ、被爆者に敬意を払い、日本政府が核兵器禁止条約に署名するように即した。ゲストブックには、「核兵器なき世界を日本のみなさんと一緒に実現しましょう」と記した。

ICAN公式サイト(英語)

壇上左から、川崎哲(あきら)国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)国際運営委員、ベアトリス・フィン(Beatrice Fihn)同事務局長

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

通訳 西村好美 


会見リポート

「核抑止は核拡散を促進する」

大杉 はるか (東京新聞政治部)

 「明日、少しは自由時間がもらえると期待している」。ノーベル平和賞受賞団体「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長が、来日中の過密日程をうらむような茶目っ気を見せると、会場は笑いに包まれた。記者会見は、和やかに始まった。

 昨年7月、国連で採択(賛成122カ国)された核兵器禁止条約は、核保有国や、日本のように米国の核に依存する国を動揺させた。日本が50年間、安全保障政策の柱としてきた「核抑止」を否定したからだ。10月には、条約を推進したICANが、平和賞を受賞。核廃絶の機運の高まりに逆行して、北朝鮮が核・ミサイル開発を続ける中、日本政府は、核抑止の重要性をむしろ強調してきた。禁止条約とは相いれない立場だが、動揺は続いている。

 フィン氏は会見で「核抑止は核兵器の利用を認め、無差別殺りくを認めることにつながる」と指摘し、条約に署名する場合は、核抑止の否定が必要だと語った。北朝鮮についても「核使用の脅威を感じ、抑止として開発した」と説明し、「核抑止をうたい続ける限り、核拡散を促進してしまう」と訴えた。

 来日後、長崎・広島を訪問したフィン氏は、日本政府の姿勢にも鋭い疑問を投げかけた。「日本人は核兵器の代償をよく分かっている。被爆地の価値観と、政府の政策には大きなギャップがある」。さらに「日本は国際社会の外れものになるリスクがある」とまで警告し、条約参加を求めた。

 記者側の主要な質問は、条約に入る条件や、影響といった点だったように思う。だがフィン氏は、直接答えず、日本の国会での議論促進に期待を寄せた。唯一の戦争被爆国である日本は、本当にこの条約に入れないのか。私たち記者自身も、その答えを見つける時を迎えているのだろう。


ゲスト / Guest

  • ベアトリス・フィン / Beatrice Fihn

    「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN〈アイキャン〉)事務局長 / Executive Director, International Campaign to Abolish Nuclear Weapons (ICAN)

  • 川崎哲 / Akira Kawasaki

    「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN〈アイキャン〉)国際運営委員 / member of the International Steering Group, International Campaign to Abolish Nuclear Weapons (ICAN)

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