2017年12月18日 15:00 〜 16:00 10階ホール
著者と語る「広辞苑第7版」 平木靖成 岩波書店辞典編集部副部長

会見メモ

「国語+百科」辞典の最高峰と言われる『広辞苑』の第7版が2018年1月12日に刊行される。改訂は10年ぶり。発売を前に、平木さんが「砂」「狐」「さする」「こする」など具体的な言葉をあげながら、改訂版の特徴や編集の舞台裏を語った。「今回の改訂の柱は類義語の語釈の充実と古典用例の総点検・書き換えの2本」。ネットで何でも検索できる時代だからこそ、言葉の意味を一読で把握できる、洗練された語釈が必要だ。社会が変われば解説も変わる。本人は否定したが、三浦しおんの小説で映画化もされた『舟を編む』の主人公・馬締光也・辞書編集部員のモデル? クラブ版『舟を編む』は会見動画でどうぞ。

 

司会:小川記代子 日本記者クラブ企画委員(産経新聞社)

 

「広辞苑 第7版」特設サイト


会見リポート

『広辞苑』を編む 改訂の現場から

本多 俊介 (日本経済新聞社記事審査部)

 『広辞苑』第7版が年明け、前回改訂からちょうど10年ぶりに刊行される。

 

 辞書編集部を描いた三浦しをんさんの『舟を編む』の主人公、馬締(まじめ)のモデルとされていると紹介された平木さんは「三浦さんから取材を受けたが、その後、何が起きて馬締さんができあがったかが分からない。モデルですと断言する紹介はしないでくださいと言っております」と穏やかな口調ながらきっぱり。

 

 『広辞苑』は1955年の第1版から「国語辞典プラス百科事典」との位置付け。例えば「砂」はどんな鉱物で直径何㍉から何㍉など地質学の分野で決まっているものが百科事典的な説明。園児と先生が「『砂』で遊びましょう」と言った時にお互いに浮かぶ共通のイメージを抽出したものが国語辞典的な説明だ。

 

 新しい言葉には「日本語として定着した言葉」を入れる編集方針。「ある程度の年数が使われないと収録しない」

 

 国語項目での改訂の柱は2本。基礎語のうち類義語の書き分けと源氏物語や万葉集などからの古典用例の見直しだ。『広辞苑』は語釈に「そっけなく一言で」という特徴がある。「なする・さする・なでる・こする」をはじめとする類義語は似たような語釈になりがちだったが「言葉の意味を正確に書き分けたかった」という。

 

 百科項目では病院関係の言葉を重点的に増補した。「(モバイル版広辞苑では)恐らく病院に行った人からの薬や病気の名前の検索件数が多かったので大きな柱としました」

 

 恒例の揮ごうでは「自由な言葉で 対等な関係を」と記した。「正しい言葉が1つあるのではなくて、お互いの中で一番コミュニケーションがとれる言葉遣いを探り合いながら、対等な人間関係を作り上げられるといいなと思って書きました」

 

 言葉と辞書への深い愛情と造詣に満ちた誠実な語り口は誰かに似ている。そう、やはり馬締の何パーセントかは平木さんがモデルだ。


ゲスト / Guest

  • 平木 靖成 / Yasunari Hiraki

    日本

    岩波書店辞典編集部副部長

研究テーマ:広辞苑 改訂第7版

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