2017年11月28日 14:00 〜 15:30 9階会見場
ゴンサロ・デ・ベニト 駐日スペイン大使 会見

会見メモ

 スピーチは自国の全般的現状だったが、質問はカタルーニャ独立問題に集中。予定外のスライドまで出して説明した。

「政治的な違いは自由だが独立宣言は憲法違反」「一部急進派を除き『独立保留』派も増えており、21日の州議会選で独立派勝利の形勢にはない」

 

 

司会 鶴原徹也 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

通訳 中尾憲枝(スペイン大使館)

 


会見リポート

カタルーニャ独立問題で熱弁ふるう

渡辺公美子 (時事通信社外信部)

 スペインは、カタルーニャ自治州の独立問題で揺れている。同州は本国からの独立を目指し、10月に独立の是非を問う住民投票を実施。賛成派は圧勝、独立宣言に踏み切ったが、これを受けて中央政府は同州の自治権停止を発動した。プチデモン前州政府首相は罷免され、波乱続きの展開となっている。

 

 ベニート・駐日スペイン大使の会見でも、話題の中心はカタルーニャ問題だった。質疑応答で各社の記者からこの懸案を問われると、大使の口調は次第に熱を帯びた。

 

 「憲法違反だ」「独立運動を進めてきた人たちは、国家にはかなわない、しっかりとした法律があってそれにはかなわない、民主主義、自由主義はしっかりとしていて、彼らはそれに勝てなかったという結果にはなるのではないか」

 

 大使は一貫して、独立派への厳しい姿勢を崩さない。中央政府は住民投票阻止のために実力行使に踏み切ったこともあり、大使は政府の立場を改めて代弁した。

 

 以前、駐日イラク大使の会見の際も、大使がクルド自治政府に対して同様の発言をしていたことを彷彿とさせた。全く異なる国ではあるものの、第三者としては同様の状況に対し「なぜ政府は民意に耳を傾けず、強硬に弾圧するのか?」との素朴な疑問を抱く。

 

 大使によると、そもそも近年の独立運動の気運の高まりは、2012年の経済危機によりナショナリズムがあおられたことが発端だという。独立派は民意のゆがみにつけ込んで国民を分断し、国家を危機に陥れていると語った。

 

 スコットランド、イタリアなど、近年の欧州諸国をみても経済とナショナリズム、またはポピュリズムとの関連性は高いという。過去にスイス、アラブ首長国連邦などで大使を歴任した外交のプロがよどみなく話す様子はパッションにあふれ、思わず引き込まれる内容だった。

 

 大使の見通しでは、12月21日の州議会選の結果にかかわらず、独立派政党は中央政府との対話を望んでいるという。独立派は政府をあまり刺激せず、交渉を通じて自治権の拡大、予算増を引き出す狙いがあるとみられる。政治的な駆け引きはこれからも続きそうだ。


ゲスト / Guest

  • ゴンサロ・デ・ベニト / Gonzalo de Benito

    スペイン / Spain

    スペイン大使 / Spanish Ambassador to Japan

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