2017年11月22日 15:00 〜 17:00 10階ホール
「2期目の習体制」(2)アジアの変化と中国の役割 呉心伯 復旦大学国際関係学院副院長

会見メモ

「トランプ氏は中国を平等なパートナーと見ている。前任者は上から目線だった」「安倍首相から関係改善のシグナルが出ている」と日米首脳に好評価も。「インド太平洋戦略で印豪が日米の期待通りに動くのか。印豪両国は対中関係を重要視している」とも牽制。

 

復旦大学HP(英語版)

写真左から賀平氏、鄭継永、呉心伯氏

 

司会 坂東賢治 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

通訳 陳羚 / 青山久子


会見リポート

個人的見解としながらも中国外交を積極PR

藤原 秀人 (朝日新聞社国際報道部)

 日本政府は日米同盟を外交の基軸であると一貫として強調し続けている。ならばと、中国政府は日本専門家の意見を今も重視するものの、米国の政治や外交、経済に詳しい研究者に対日政策の助言をますます求めるようになっている。

 

 記者会見した復旦大学国際関係学院副院長でアメリカ研究センター所長も兼ねる呉心伯教授は中国を代表する米国研究者で、論文を次々に発表するだけでなく、頻繁に内外のメディアにも露出している。今回の来日は中国外務省の依頼で今後の日中関係の改善方向を探るのが目的、と語った。中国共産党大会が閉幕し、トランプ米大統領の訪中など一連のアジア外交が終わった直後という、絶妙なタイミングでの会見となった。同僚の賀平国際関係学院日本研究センター准教授と鄭継永韓国研究センター所長が同席した。

 

 呉氏は何度も個人的見解だと前置きして話していたが、中国の注意深い研究者は共産党や政府の政策をそう言いながら代弁、宣伝することが多い。呉氏もそうだと思う。

 

 ただ、「2期目の習体制―アジアの変化と中国の役割」をテーマにした呉氏は、非常に明快な論旨で中国外交を語り、会見の出席者からも評価が高かった。

 

 米国に次ぐパワーとなった中国がどういう方向に進むのかは、大きな関心事である。呉氏は「中国はアジア地域発展の推進力になっている」としながらも、米国との対立は望まず、競争と協力のバランスをとり共存していくと述べた。また「中国の勃興は地域共同体をつくるのに積極的な意味があり、日米などは批判的な態度をとるべきでない」とくぎを刺した。

 

 トランプ訪中を大成功だと評価した呉氏だが、日中関係の将来については必ずしも楽観的ではなかった。日中関係は確かに、安倍晋三首相が習近平国家主席、李克強首相と相次いで会談したように改善基調にあるが、安倍外交が「戦術」にとどまるなら本格的改善には至らないと指摘した。

 

 復旦大学からは王滬寧氏が江沢民、胡錦濤、そして習近各氏の強力な知恵袋(ブレーン)となり、先ほどの党大会では最高指導層の政治局常務委員にのぼりつめた。あなたは第2の王氏になるといううわさがあるが、と水を向けたが「それはデマだ」を返してきた。王氏もそうだったが、賢い人はそう答えるものだ。


ゲスト / Guest

  • 呉心伯 / Wu Xinbo

    中国 / China

    復旦大学国際関係学院副院長、アメリカ研究センター所長 / Professor and Executive Dean, Institute of International Studies, and Director at the Center for American Studies, Fudan University

  • 賀平 / He Ping

    中国 / China

    復旦大学国際関係学院日本研究センター准教授 / Associate Professor of international politics at the Center for Japanese Studies, Institute of International Studies, Fudan University

  • 鄭継永 / Zheng Jiyong

    中国 / China

    復旦大学韓国研究センター所長 / Associate professor and Director at the Center for Korean Studies, Fudan University

研究テーマ:2期目の習体制

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