2018年02月06日 14:00 〜 15:15 10階ホール
バズビー AP編集主幹を囲む会

会見メモ

APの現役編集主幹が、トランプ政権取材の現状を生々しく語った。「トランプ政権下での報道の自由は最悪事態ではない。名誉棄損訴訟もないし、ホワイトハウスからプレスが締め出されているわけでもない。しかし、事実と異なるものが悪びれずに発表され、質問も政権に好意的な記者が指名され、報道の自由は脅かされている」「APは、事実に基づき客観報道に徹したい」

 

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

AP、事実確認で信頼獲得

杉田 弘毅 (企画委員 共同通信社論説委員長)

 トランプ時代に生きる米メディアの闘いを間近で聞いた。その中でも通信社論を紹介したい。

 CNNが24時間ニュースを流し、重要イベントを中継する時代に、「通信社の役割は何か」という問いが会場から出た。

 さて彼女はどう答えたか。

 「この10年間で一番うれしかったのは」と切り出したのは、歌手のマイケル・ジャクソンが死亡した時の報道だった。2009年6月25日、ジャクソンがロサンゼルスの病院で死亡した、との情報が流れ、世界中のテレビが報じ、アクセスでパンクするウェブサイトもあった。

 しかし、世界はまだ「死んだらしい」という、フワフワした不確かな情報に接していただけだった。その頃、歌手、俳優ら芸能人取材をAPなどの硬派メディアは先頭で行わないという慣習もあった。

 だが、ジャクソンは、世界的なポップスターだ。その死は大ニュースだからということで、APが病院や親族から「死」を確認して速報した。すると、ようやく米国も世界も「ポップの王様、マイケル・ジャクソンが死んだ」ことを「事実として受け止めた」という。APが報じて初めて歴史の事実になったというわけだ。「信頼されているからよ」と彼女は付け加えた。

 確かにAPの印象は「間違えない」だ。右でも左でもない。だから記事はいわゆるセクシーでない。だけど信頼できる。

 思い出すのは、米国中のメディアが間違えた2000年の米大統領選だ。フロリダ州の開票結果を巡って混乱したこの選挙は、投開票日から翌日にかけて「ゴアだ」「ブッシュだ」と誤報が続いた。日本メディアも引きずられた。

 だが、APだけが全米に張り巡らせた支局から上がってくる実票を基に「まだ打てない」と踏みとどまった。「共和党も民主党もデジタルメディアもAPを信用している」とバズビー氏は誇らしげに語った。


ゲスト / Guest

  • サリー・バズビー / Sally Buzbee

    AP / AP

    編集主幹 / Executive Editor

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