2017年11月13日 15:00 〜 16:00 10階ホール
更田豊志 原子力規制委員会委員長 会見

会見メモ

原子力規制委員会発足時から委員を務め、委員長代行を経て、9月22日に2代目委員長に就任した。更田豊志氏の冒頭挨拶は「初心を忘れず」との言葉から始まった。「人間は悲劇であればなお、その記憶を和らげたいと思ってしまう。だからこそ、その記憶を『組織』として、しっかり刻み込む必要がある」。最初の5年よりこれからの5年は難しい判断を求められるとも語り、新委員長として規制委員会の在り方や安全規制について考えを示した。 

 

司会 上田俊英 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)

 

原子力規制委員会


会見リポート

事故を組織的な記憶に

大牟田 透 (朝日新聞社論説委員)

 東京電力福島第一原発の事故への反省を踏まえて5年前に誕生した原子力規制委員会。その2代目委員長に9月、就いた。

 

 長年、原子炉の安全研究に携わってきた。国会で委員長候補としての所信を問われた際には「あのような事故に至ってしまったことに強い衝撃を受けるとともに、事故以前に声を上げることはできなかったのかと後悔と反省を覚えた」と述べた。

 

 今回の会見でも冒頭、「規制委発足時の初心を忘れない」「人は忘れやすい生き物。組織的な記憶にしていくことが大事」と語った。

 

 第一原発事故の直接的な教訓としては、自然環境が考えられていたより厳しい条件にあったことと、過酷事故対策を電力会社の自主的な取り組みにとどめていたことを挙げ、こうした楽観を戒めた。

 

 一方、規制委の権限を巡っては自制的な姿勢が目立った。東電に原発を動かす資格があるかを巡る論議については「私たちなりの努力の結果だ」。安全文化と原子力防災の法律上の責任が一義的に自治体にあることについても「地域の実情を最も把握している主体が責任を持つことは良いことだと思う」と述べた。

 

 会見で指摘された運転停止長期化への問題点に対しては「最も深刻なのは人の問題」と懸念を共有した。

 

 だが、集中立地のリスクをどう考えるかに関しては「ここ数年国際コミュニティーでもたびたび議論がある」と述べながら、「答えを持っているわけではない」。規制委として避けてはならない議論ではないか。

 

 事故時に感じた後悔が繰り返されないか、原子力を取り巻くアカデミアの反省と覚悟を問うと「個々の良心に頼る部分がある。正直十分なところまで行っていない」という。

 

 一方、残念ながら会見の出席者はそれほど多くなく、専門外の観点からの質問も活発とはいえなかった。事故時の思いを忘れていないか。アカデミアやメディアも問われていると考えた。


ゲスト / Guest

  • 更田豊志 / Toyoshi Fuketa

    日本 / Japan

    原子力規制委員会委員長 / Chairman , Nuclear Regulation Authority

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