2017年10月27日 10:30 〜 11:30 10階ホール
「トランプ政権と米国の行方」(12) 対アジア関係 ウォルター・ローマン ヘリテージ財団アジア研究センター長

会見メモ

米保守系シンクタンク幹部。「トランプ大統領は南シナ海の『航海の自由作戦』にも積極的で日米同盟の戦略的価値も理解している。国際政治での人権の価値もわかっており心配ない」「懸念は貿易関係。TPPの代替案がなく、先行きは楽観できない」

 

司会 土生修一 日本記者クラブ専務理事

通訳 森岡幹予(サイマル・インターナショナル)

ヘリテージ財団

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会見リポート

トランプ氏の通知表「及第点」

北井 邦亮 (時事通信社外信部編集委員)

 トランプ米政権のアジア太平洋政策を査定したら、通知表の中身はどうなるか。トランプ大統領の日中韓などアジア5カ国初訪問を控え、分析を披露したローマン氏は、及第のお墨付きを与えた。同氏が掲げた評価軸を基に勝手に採点したところ、100点満点で75点に達するのだ。

 

 第1の項目は、「米国の役割の中核」である軍事面の関与。ローマン氏は、海軍増強の取り組みや、中国の過剰な海洋権益の主張を否定する南シナ海での「航行の自由作戦」の実施頻度上昇を高く評価した。

 

 対日関係では「トランプ氏は恐らく日米同盟の戦略的価値を理解するようになってきた」と指摘する。総じて、2つ目の項目である外交・政治でも「かなり良い仕事ぶり」だ。

 

 第3の項目は、人権と民主主義という価値観を重視しているかどうか。外交を取引になぞらえるトランプ氏だけに、厳しい見立てになるかと思いきや、ミャンマーや北朝鮮の人権状況を批判していることを引き合いに「米国は人権や民主主義を引き続き重視していく」と太鼓判を押した。

 

 唯一「あまり楽観できない」と懸念するのは、経済・通商だ。環太平洋連携協定(TPP)離脱や韓国との自由貿易協定(FTA)見直しなど、トランプ政権には保護主義の傾向が顕著だ。米側が関心を示す日本とのFTAも、トランプ氏が来日したからといって進展は望めないという。

 

 以上4項目、配点は各25点。経済・貿易以外で得点を重ね、計75点となる。ヘリテージ財団と政権の関係が良好だという事情を割り引いても、一貫性の欠如と暴言がトレードマークのトランプ氏にしてはかなりの高得点と言える。

 

 ローマン氏は「トランプ氏のツイッターを読んだりしているだけでは不十分だ」と述べ、政府全体の動きを捉え、方向性を見極めるべきだと説いた。振り返れば、米政府は1990年代から成長のフロンティアであるアジアへの進出を掲げてきた。アジア重視は、いかなる政権にとっても「明白な運命」なのかもしれない。


ゲスト / Guest

  • ウォルター・ローマン / Walter Lohman

    アメリカ / USA

    ヘリテージ財団アジア研究センター長 / Director, Asia Studies Center, Heritage Foundation

研究テーマ:トランプ政権と米国の行方

研究会回数:12

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